昨日(7月21日)の夕方、総理官邸で経済財政諮問会議が開かれました。
因みに「経済財政諮問会議」とは、法律に基づいて設置された11名からなる総理の諮問機関で、橋本内閣時代の中央省庁再編によって設置されました。
会議のメンバーは次のとおりです。
菅総理、麻生財務相、加藤官房長官、西村経済再生相、武田総務相、梶山経産相、黒田日銀総裁に加え、以下の4人の民間人で構成されています。
竹森俊平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
十倉雅和(住友化学株式会社 代表取締役会長)
新浪剛史(サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)
よくメディアは、この4人の民間人メンバーたちを「民間議員」などと呼んでいますが、べつに彼らは選挙で選ばれているわけでもありませんので少なくとも「議員」ではありません。
ただ、彼らが選挙で選ばれた国会議員たちよりもはるかに発言権をもっていることは確かで、そのことは民主的な政策決定プロセスからしても極めて問題です。
さて、きのう会議での議事は次の3点だったようです。
①金融政策及び物価等に関する集中審議
②最低賃金について
③中長期の経済財政に関する試算
まず、黒田日銀総裁から、現在の物価情勢と日銀の金融政策運営についての説明があったようです。
とはいえ、依然として物価上昇には至っていない以上、日銀の金融政策に大幅な変更はあり得ないでしょう。
続いて梶山経産相から最低賃金の引き上げについての説明があり、その後、中長期の経済財政に関する試算がテーマとなったようです。
私が注目したいのは、とりわけ「中長期の経済財政に関する試算」です。
中長期の経済財政に関する試算とは、具体的にはPB(基礎的財政収支)の黒字化目標のことです。
財務省はPB黒字化目標を黒字化するために、この経済財政諮問会議を便利に使っています。
要するに財務省は、この会議体を使って彼らの目論むPB黒字化目標を政治的に決定させているわけです。
ことし1月の段階において経済財政諮問会議は、国と地方のPB黒字化は2029年度(成長実現ケース)になるとの見通しを示していました。
ところが、2020年度の税収が過去最高となったために、黒字化の予定が2年前倒しされ2029年度から2027年度に修正されました。
これを日本経済新聞は、「それでも目標の2025年度にはなお届かず、そもそも実現性は不透明で、目標自体の3度目の先送り議論も避けられない情勢だ」と報道しています。
アホか!
PB黒字化目標とは、裏を返せば「国債発行抑制目標」であり、家計や企業など「民間部門の赤字化目標」です。
国債発行残高を増やすことができなければ新たな貨幣供給はできず、起債を前提にした社会インフラ整備もできません。
ましてや、コロナ禍で苦しむ国民の財布を赤字化して何が嬉しいのでしょうか。
残念ながら、このことを財務省をはじめ経済財政諮問会議のメンバー、日本経済新聞などのメディアらは理解することができません。
政府収支と民間収支と海外収支の合計は必ずゼロになる、これは逃れるこのとできない国民経済の原則です。
政府が黒字(赤字の縮小を含む)になれば、必ず家計や企業などの民間部門は赤字(黒字縮小を含む)になります。
即ち、PB黒字化目標とは国民貧困化目標です。
あろうことか、それを財務省、そして経済財政諮問会議は「できれば2025年度までに達成したい」とし、無知なメディアはそれを囃し立てています。