再びビットコインが下落しています。
一時、節目である3万ドルを一ヶ月ぶりに割り込みました。
今回の下落の最大の要因は、イエレン米財務長官の発言です。
ただし、イエレン米財務長官の発言に政治的な問題があったわけでありません。
むしろ、その発言が至極真っ当であったがゆえに、仮想通貨にとっては手厳しい現実を突きつけられた格好となっています。
では、イエレン米財務長官はどのような発言をされたのでしょうか。
それは「ステーブルコインについての提言を、数ヶ月以内に発表する予定だ」というものです。
ステーブルコインとは、取引価格が安定することを目的として設計された暗号資産の一種で、法定通貨(米ドルなど)を裏付けにした仮想通貨のことです。
実は、このステーブルコインの取引については、かねてより資金洗浄の懸念が指摘されています。
その懸念からイエレン米財務長官が19日、「(ステーブルコインについて)規制の枠組みを早期に整備するために迅速に行動する必要がある」という考えを示したことで、ビットコインをはじめ暗号資産市場が下落したわけです。
現在の暗号資産市場は、米国におけるワクチン接種率の伸び悩み、及び感染の再拡大を嫌気したリスクオフの流れに、規制の強化という流れが加わったダブルパンチの状況です。
市場関係者からみたとき、ステーブルコインは法定通貨の裏付けをもたせるために準備金を用意しなければならず、そのことが経営の重荷になることが指摘されていました。
一方、規制当局は、これがマネーロンダリングに利用される可能性を恐れていました。
そこでイエレン米財務長官が、ステーブルコイン規制の強化について言明したわけです。
もともと暗号資産には、発行上限に制約があること、加えてデジタルデータによることのセキュリティへの懸念という大きな問題点があります。
今度は、価格を安定させるために法定通貨の裏付けをもたせようとしたわけですが、皮肉にもマネーロンダリングの懸念から規制が強化されることとなって、たちまち暗号通貨市場が下落している始末です。
詰まるところ、ビットコインであれ、ステーブルコインであれ、いわゆる暗号通貨は決して「通貨」にはなり得ず、資産価値が乱高下するデジタル「資産」にしかなり得ないことが、あらためて裏付けられたのだと思います。
なお、通貨というものが、いかに国家権力と密接に関係しているものであるのかを痛感します。