政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種歴を証明する『ワクチンパスポート』について、7月26日から全国の市区町村の窓口を通じて申請・受け付けを開始することになりました。
それを根拠付ける法令は次のとおりです。
予防接種法施行規則 附則
第十八条の二 法附則第七条第一項の規定による予防接種を行った者は、当該予防接種を受けた者であって、海外渡航その他の事情により、第四条第一項の予防接種済証とは別に当該予防接種を受けたことを証する書類(以下この条において「予防接種証明書」という。)を求めるものに対して、これを交付するものとする。
これを受け自民党の世耕弘成(自民党参議院幹事長)さんは、次のように述べて政府に対し検討を求めています。
コロナ禍での飲食店の酒類提供について「お客さんがワクチン接種の証明書を提示することや、来店時に抗原検査を義務づけることによってお酒の提供を認めてはどうか」と。
なお、経団連もまた「証明書などを使って国内活動の制限緩和につなげるべきだ」と主張しています。
なるほど、それも一つのアイデアだと思います。
我が国ではワクチン接種への慎重論が病的なまでに優先されて、先進諸国のなかでも大幅に接種の開始が遅れてしまいました。
ご承知のとおり、日本の接種率の低さは先進国でも群を抜いています。
ゆえに残念ながら未だ集団免疫の獲得には至っておらず平常の経済活動を再開できない深刻な状況が続いています。
しかも、政府運営者たちの経済財政に関する無知からくる緊縮財政思想が幅をきかし、経済的補償が不十分なままにただただ「自粛」を要請するばかりのコロナ対策が国民生活を過酷なまでに疲弊させています。
まるで大東亜戦争末期の「欲しがりません。勝つまでは…」状態を強要されているようです。
このままでは、コロナで死ぬヒトよりも政府の失策で死ぬヒトのほうが多くなってしまいでそうです。
そうしたなか、加藤勝信官房長官が12日の記者会見で我が耳を疑うような、実に驚くべき発言をされています。
「証明書提示により、当面は防疫措置の緩和などが認められる国や地域に渡航する場合に限って申請していただくようお願いする」と。
何を言っているのでしょうか。
前述の『予防接種法施行令』をよく読んで頂きたい。
断っておきますが、施行令も立派な法的根拠です。
その法的根拠に「海外渡航その他の事情により、当該予防接種を受けたことを証する書類(予防接種証明書)を求めるものに対して、これを交付する」とあります。
繰り返しますが、①海外渡航と、②その他の事情により…発行するとあります。
それがどうして「当面は海外渡航に限定する」という解釈ができるのでしょうか。
官房長官の勝手な解釈、即ち恣意的な解釈で法が運用されるのであれば、もはや我が国は法治国家とは言えません。
過日の川崎市議会で私が指摘したとおり、川崎市の人事委員会が勝手な法解釈で「これが法的根拠だ」と公文書を捏造・偽造したのと全く同じです。
しかも法律を無視した運用を、国会もメディアも法律家も誰も咎めようとしない。
実に不健全かつ危険なことです。
このことは国であれ地方であれ、絶対に無視することのできない我が国の深刻な病根です。