米国では、バイデン大統領が8年間で約220兆円規模のインフラ投資計画を発表しました。
インフラ計画に加え、コロナ対策や家庭・医療分野への支援をも含めると、なんと総額550兆円の規模に及ぶらしい。
米国もまた我が国同様に80年代に整備した道路や橋やトンネルなどのインフラが老朽化しているにもかかわらず、これまで連邦レベルでのインフラ投資は数十年間行われてきませんでした。
まさに全米レベルでの投資が求められているようです。
なお、バイデン政権は基本的に気候変動対策を優先課題にしています。
これまで運輸・インフラ法案にそうした分野の項目は含まれてきませんでしたが、沿岸部の風力発電施設の拡大やその他の環境投資を含めたいとしています。
さて、これら関連法案を連邦議会に提案するわけですが、問題は上下両院とも民主党が多数党であるという点でしょうか。
野党である共和党はもともと気候変動対策と支出拡大に懐疑的で、基本的に支持できない政策です。
といってバイデン大統領が超党派の法案を出すのも極めて困難かと思われます。
オバマ政権時代も、オバマケアや救済策について共和党の支援を求めようとしましたが、結局は協力を得られず超党派の雰囲気が生まれることはなかったようです。
それに、今回の大型投資計画には増税案も盛り込まれています。
バイデン政権は、財源の一部として法人税と所得税の増税を検討しているようです。
法人税は連邦法人税率を21%から28%に引き上げ、所得税は富裕層増税を検討しているとのこと。
このこともまた共和党としては認められないところでしょう。
おそらくバイデン大統領は超党派合意を断念し民主党単独で強行突破を試みるのではないかと思います。
それにしても、はじめから財源を増税に求めているあたり、米国でもMMT(現代貨幣理論)の貨幣観(財政観)は未だ浸透されていないようです。
増税先が法人や富裕層とはいえ、インフラ投資なのですから財源はすべて国債として支出し、その後、インフレ率や雇用情勢をみながら徐々に歳出をカットしたり、あるいは税率を引き上げたりして調整していけばいいと思うのですが、なぜ投資前から増税ありきなのでしょうか…
「税は財源確保の手段である」という固定観念から抜け出すのは、たしかに至難なことではありますけど。
むろん、在りもしない「財政破綻論」や「プライマリーバランス黒字化目標」を理由にインフラ投資をやらない日本よりは、よっぽとマシです。