ワクチン接種業務の責任主体は、地方自治体です。
ゆえに今、各自治体の担当部署は、そのハード面、ソフト面の整備にむけてフル稼働しています。
とりわけ、もっとも予防率が高いとされるファイザー社のワクチンの取り扱いには繊細さ求めらます。
であるからこそ川崎市は、できうる限りワクチンの管理を一元化したいと考え「集団接種会場」での接種を基本に整備を進めています。
一方、各医療機関での「個別接種」を基本体制とする自治体もあります。
典型的なのが「練馬モデル」でおなじみの練馬区です。
しかし個別接種会場方式には一つ決定的な難点があります。
ファイザー社のワクチンは、移送時に衝撃・振動を与える可能性のある小分け搬送の際には、必ず冷凍状態(マイナス15℃以下)を維持しなければならないことです。
なぜなら、マイナス15℃以上の状態でワクチンに衝撃や振動を与えてしまうとその品質が保証されないからです。
なるほど振動・衝撃を与えず自動車やバイクで移送することは実に困難です。
これまでファーザー社は「(冷蔵状態での移送については)やむを得ない場合は自治体の責任において移送してほしい」と譲歩していましたが、このたび(3月28日付け)の『説明資料』の一部改定で「冷蔵状態でワクチンに衝撃・振動を与えることは避けよ」としています。
そこで、改めて練馬区の資料(冒頭図表)をみますと、やはり「2〜8℃の冷蔵状態で移送する」となっています。
自動車であろうが、バイクであろうが、戦車であろうが「衝撃・振動」を与えずに移送することは可能なのでしょうか。
ゆえに特殊車両でも用意できないかぎり、移送の際には「冷凍」状態を保持しなければならないはずです。
今後、練馬区はどうするのかわかりませんが、練馬モデルを参考に整備してきた自治体についても移送体制(冷蔵ではなく冷凍での移送)についての対応が求められることは必至でしょう。
厳密には、直近のファイザー社の説明資料には次のように記述されています。
「(冷蔵移送の場合)衝撃・振動を避けること」
何度でも言いますが、衝撃・振動を加えずに移送することは余程の特殊車両でもないかぎり不可能です。
こうなると、練馬モデルを参考に個別接種を基本に整備してきた自治体は大変だと思います。
個別であるがゆえに、マイナス15℃以下を維持できる「冷凍ボックス」を大量に確保しなければなりません。
そんな大量の冷凍ボックスを今から手配できるのでしょうか。
もしかすると、ファイザー社の示す「(冷蔵移送の場合)衝撃・振動を避けること」という一文を、ご都合主義で「できるだけ衝撃・振動させなければいい…」などと拡大解釈するいいかげんな自治体がでてくるかもしれません。