米中露が月面を目指す理由

米中露が月面を目指す理由

中国はロシアとともに宇宙開発を進めています。

その名は、ILRS(国際月面研究ステーション)計画。

2028年には月面探査ミッション「嫦娥8号」を打ち上げる予定で、きのう(23日)、その主任技術員がミッションのプレゼンテーションを行い、そのなかで「(中国が)月面に原子力発電所を建設することを検討している」ことを明らかにしました。

宇宙開発で他国に先駆けるということは、先端技術分野で他国を圧倒することを意味します。

ゆえに中国もロシアも、内向き志向の米国を尻目に宇宙開発分野への投資を加速させているわけです。(むろん、米国も月面開発を進めている)

中国が月面に原発を建設する目的は、当然のことながら研究ステーションや月面での探査活動を安定的に維持させるために必要なエネルギー供給源を確保するためかと思われます。

なお中国は、月面に物資を送るための中継基地となる宇宙ステーションの建造も計画しています。

かつて「2番じゃダメなんですか?」と言っていた日本の国会議員がいましたが、我が国は既に2番でも3番ですらもないのです。

さて、中国が月面探査を急いでいる大きな理由の一つが、ヘリウム3の確保です。

やがて、原発に取って代わり、「核融合炉」がエネルギーの主流となる時代がきたとき、どうしても必要になるのがヘリウム3です。

核分裂の制御に大きなリスクを抱える原発とは異なり、二つの原子を一つに融合させ反応させる核融合炉ははるかにリスクが少ない。

核融合が核分裂と異なる最大のメリットは安全性で、核融合のエネルギーは核分裂の4〜10倍以上にもなります。

つまり核融合発電は、莫大なエネルギーを安全に得られるという、現時点で考えられる最高のエネルギー発生装置なのです。

そこで必要となる原料が「重水素」と「ヘリウム3」です。

重水素とヘリウム3の原子を融合させることで核融合反応を起こすわけですが、つまりこの二つを安定的に入手できれば、それ即ち永遠のエネルギーを獲得したも同然で、その国のエネルギー問題は解決します。

ご承知のとおり、重水素は水(海水)を電気分解すれば無尽蔵に入手可能です。

問題はヘリウム3です。

ヘリウム3は太陽風に含まれており、常に地球上に降り注いでいるのですが、地球の大気にヘリウム3は吸収されてしまい海や土にはほとんど溶け込みません。

といって、大気中のヘリウム3の濃度はあまりにも低いため、大気から精製することも不可能です。

一方、大気の無い月には、ヘリウム3を含んだ太陽風がダイレクトに月面に降り注ぎます。

よって、月面の砂にはヘリウム3が高濃度に含まれているため、核融合炉の燃料として取り出すには最適なのでございます。

米国、中国、ロシアが月に向かう理由はここにあります。

仄聞するところによると、中国のみならず米国も、ヘリウム3の採掘基地建設に最適な場所を既に見つけているらしい。

エネルギーを自給できない国の末路はどうなるか。

私たち日本国民は、大東亜戦争での敗北により知っているはずです。