今年に入って、米国の10年債利回りが上昇しています。
とはいえ、「上昇している」と言っても、たったの0.7%ぐらいです。
1月4日の時点で0.93%だったのが、4月6日の時点で1.67%になった程度です。
これを受け、日本のメディアは殊更に「インフレ懸念」を煽り立てていますが、米国の中央銀行(FRB)は至って冷静です。
米国の金融政策を決定する会合であるFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録(3月16、17日に開催)によれば、最近の米国債利回り上昇について「景気見通しの改善を反映している」という見解を示しています。
実に真っ当です。
因みに、日本のメディアがインフレ懸念を煽り立てているのは、ウォール街の金融機関が「インフレ懸念」を表明しているからです。
日本のメディアにとっては、ウォール街の意見が自分たちの意見です。
しかし、ウォール街がなんと言おうと、FRBは「月間の資産購入額を縮小する条件を満たすにはしばし時間を要する」という見解を示し、緩和的政策を続行するとしています。
日本においても政府支出(国債発行)が拡大されると必ず「長期金利が上昇するぅ〜」と騒ぎ立てる人たちがおりますが、長期金利がマイルドに上昇するのは景気が上向いて資金需要が高まっている証左です。
その意味で、金利上昇を懸念するというのは景気が良くなることを懸念しているに等しい。
たった0.7%程度の上昇を「急上昇」と言って騒ぎ立てるのは、資産を転がしてい稼ぐ人たち(金融家)にとってインフレは金融資産の下落を意味するからです。
彼らにとってはデフレ経済(物価下落=金融資産上昇)のほうが心地いい。
しかしながら、働く(付加価値の生産)ことで稼ぐ多くの人たちにとって、デフレは地獄です。
なにしろデフレ経済は着実に実質賃金を下げ続け、所得を稼ぐことで生計を立てる多くの国民を貧困化させるからです。
だからこそ、ワクチン接種の普及によって雇用統計が改善されはじめたとはいえ、米国政府はデフレ経済への逆戻りを阻止するべく財政を出動させるわけです。
しかも、前述のとおりFRBは長期金利の上昇などには目もくれず、「成長見通しを巡る不確実性が高い」という判断から「緩和的なスタンスを維持する」としているわけです。
デフレは国民を貧困化させ国力をも低下させてしまうことを日本政府は理解できないらしいが、米国は政府も中央銀行もそのことをちゃんと理解しているから羨ましい。
米国経済がマイルドなインフレ状態を維持できるようになるまで、FRBの金融緩和は続くことでしょう。