先月、日銀から発表された『資金循環統計』によれば、我が国の家計金融資産が2,000兆円に迫る勢いです。
昨年12月末時点での家計金融資産は1,948兆円で前年比2.9%の増となりました。
因みに、その半分以上は現預金です。
なぜ、家計金融資産が増えているのか?
むろん、その分政府が債務を拡大しているからです。
絶対的に否定することができない物理法則として、誰かの負債は必ず誰かの資産なのでございます。
例えば昨年、国民一人ひとりに10万円が支給された「特別定額給付金」を考えれば解りやすいと思います。
政府が「特別定額給付金」を支給するために約12兆円の国債を発行したことにより、国民の預金が12兆円を増えたわけです。
重要なことは、政府が12兆円の国債を発行するとき、国民の預金を原資にしているわけではないことです。
政府の国債発行の原資が民間貯蓄だと誤解している人たちがおられますが、明らかな間違いです。
国債は主として民間銀行に引き受けさせますが、そもそも民間銀行は無から預金通貨を発行できる存在であり、どこかからおカネを調達してきて国債を購入しているわけではありません。
オペレーションとしては、民間銀行が国債を購入すると、民間銀行が日銀に持っている当座預金から、政府が日銀に持っている当座預金へとおカネ(12兆円)が移るだけです。
因みに、どうして政府と民間銀行との間でそのような面倒くさい当座預金のやり取りを行っているのかと言うと、政府の国債発が金利に無用な影響を与えないためです。
さて、政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」のメンバーであり、財政破綻派の牙城である東京財団政策研究所の研究主幹である小林慶一郎氏は、2018年4月に『財政破綻後 危機のシナリオ』という書籍を刊行しています。
その中で氏は、「いまや財政破綻は起きるか起きないかではなく、起きたらどうなるのか、どう危機を凌ぐのかを考えるべきときにきている」という、いわゆる「財政破綻論」を主張しています。
しかしながら、前述したように政府が赤字になることで、民間(家計)の黒字を増やしています。
なのにこの連中はといえば、民間の純資産(黒字)を増やす国債発行を問題視し、在りもしない「財政破綻論」を四半世紀も騒ぎ立て、未だPB黒字化の必要性を解き続けています。
そのPB黒字化至上主義こそが、例えば我が国の病床を削減させ、保健所の数を半減させ、新型コロナ感染問題という危機に対しも極めて脆弱な日本をつくりあげたのです。