対米戦略ゼロの石破内閣

対米戦略ゼロの石破内閣

CNNテレビによれば、トランプ米政権が進める連邦政府機関の縮小計画の中には、在日米軍を強化する計画の中止も含まれているとのことです。

在日米軍のみならず、ヨーロッパを管轄する軍、アフリカを管轄する軍の司令部の統合のほか、軍の訓練や教育を統括する部署の閉鎖も俎上に載せられているらしい。

近年、米国が覇権国としての意思を喪失していることは承知していましたが、米国ファーストを掲げるトランプ大統領は本気で国際秩序の維持者(警察)としての地位を返上しようとしているようです。

むろん、各国にディールを仕掛け、何らかの経済的、外交的、軍事的な譲歩を引き出そうという狙いもあってのことでしょうけど。

日本の自動車(対米輸出)に対する25%の追加関税案もまた、日本から何らかの譲歩を引き出すためのディール材料であるのと同じように。

トランプ大統領が日米安保の片務性に対して強い不満をもっているのはよく知られているところです。

「こんな条約は米国にとって損だから日本はもっとカネを出せ。出さないなら在日米軍を撤退させるぞ!」と言いたいわけです。

まるで労働組合がストライキするような感じです。(最近では労働組合でもストライキをしませんが…)

ここで最悪なのは、安全保障であれ、関税であれ、トランプ政権が仕掛けるディールに対して日本政府(石破内閣)がカウンターパンチとなる対米戦略を全く持っていないことです。

日本のマスコミも「トランプ外交の危うさがぁ〜」などと呑気なことを言っていますが、日本政府が何の準備もできていないことのほうがもっと危うい。

例えば、トランプ政権は各国に「関税を引上げる」と言っていますが、それに対して多くの国が「制裁関税をやる」と言い返しています。

ヨーロッパは「米国と同水準の関税を課す」と言っていますし、中国も「制裁関税を課す」と言っています。

カナダやメキシコなどのように米国から見れば全く対等なパートナーではない国でさえ、既に「制裁関税を課します」と宣言しています。

これは別に驚くことでもなんでもなく、外交の基本です。

すなわち外交交渉とは、なんとしてでもお互い痛み分けの状況に持ち込んだ上で、さらに有利な交渉条件を引き出そうとするものです。

戦後の平和ボケは政府のみならず民間にまで及んでいて、先日も日本の自動車業界が経済産業大臣に対し「トランプ政権に関税を引き上げないようにお願いしてくれ…」と要請したらしい。

〇〇か… 米国としては「日本車」こそが米国市場を侵略している元凶と考えている上での関税なのに、日本車だけを追加関税の対象から外すわけがないでしょうに。

日米首脳会談後の記者会見でも石破は、米国記者からの「制裁関税を課す気はあるのか?」という質問に「仮定の質問にはお答えできない…」と応じ、トランプ大統領から失笑されています。

25%の追加関税に対し、未だに石破は「適切に対応しなければ…」とするばかりで制裁関税について何ら言及しない。

要するに、米国様から舐められっぱなしで、かの国が最も嫌がる政策をほのめかすことすらしないわけです。

現時点で米国が最も嫌がる対抗措置といえば、例えばデジタル・サービス・タックスです。

米国のNetflixとかAmazonなどのビッグテックが提供するデジタル・サービスにたいして一定の課税をかけることです。

そもそも、これらビッグテックは税金をあまり納めていない連中です。

安全保障を米国様に依存しているわが日本としては、こうしたカードを手にしながら交渉するほかないと思うのですが、そのように言うと「在日米軍が本当に出ていっちゃったらどうするんだぁ〜」という意見が国内から出てくるかもしれません。

だったら、在日米軍など無くなっても自国でやっていけるだけの防衛力をつけりゃいいだけの話です。

私の言う「準備」とはそういう話です。

あっ、もしかすると、デジタル・サービス・タックスをやった場合、米国政府ではなく日本国民の側から「NetflixやAmazonに課税されちゃうと負担が増えるから止めてくれぇ〜」という批判がでてくるかもしれません。

対米交渉において日本政府が堂々と渡り合うためには、私たち日本国民にもそれなりの覚悟が必要です。