消費税は輸出補助金としてはじまった

消費税は輸出補助金としてはじまった

住友化学の会長であり、経団連の会長でもある十倉雅和氏は、「消費税は少子化対策のためにも必要だ…」と言っています。

すなわち、「消費税により財源を確保し、少子化対策に使え…」と。

しかしながら現実は、少子化を深刻化させている元凶こそが消費税であり、話は全くの逆です。

少し説明が必要になりますが、消費税は事実上の第二法人税であり、その納税義務は事業者が負っています。

法人税は赤字企業には課されませんが、消費税は黒字であろうが赤字であろうが容赦なく事業者に課されます。

なお、事業者の利益に課されるのが法人税ですが、事業者の「利益+非課税仕入」(粗利)に課されるのが消費税です。

利益に対しては法人税と消費税の二重課税になっているのも問題なのですが、さらに問題なのは「非課税仕入」に対しても課税していることです。

非課税仕入とは、要するに正規職員の人件費です。

つまり、事業者は正規職員を抱えれば抱えるほど、消費税負担が大きくなる仕組みになっています。

ゆえに、消費税が導入されて以来、そして消費税の税率が引き上げられるたびに多くの事業者は、納税回避を目的にできるだけ正規社員を非正規化してきたわけです。

因みに、竹中平蔵先生が会長をお勤めになられている某派遣会社が儲けることができたのもそのためです。

その竹中先生がしきりに消費税増税の必要性を言うのも宜なるかなです。

30代の正規社員と非正規社員の婚姻率を調べますと、正規社員は約60%、非正規社員は約20%です。

正規社員の半分以上は結婚できていますが、非正規社員は5分の1の割合しか結婚できておりません。

一方、有配偶出生率は上昇していることから、結婚できるほどに経済力のある夫婦は子どもを生み、経済力に乏しい非正規社員は子どもを生むどころか結婚さえできていないのが実状です。

そうした非正規社員を増やしたのは、まさに消費税です。

それでもまだこの期に及んで「消費税は少子化対策のために必要だ」と言うのでしょうか。

もともと消費税(欧州では付加価値税と言う)は、経営不審に喘いでいたフランスの自動車会社ルノーを救うためにフランス政府が拵えた税制です。

つまり、ルノーが自動車を輸出する際、フランス政府がWTO(自由貿易協定)に反することなくルノーに対し「輸出補助金」を出すために編み出したインチキ税制です。

消費税(付加価値税)には、「輸出戻し税」があるのはそのためです。

「国内の生産過程で消費税を払っているのに、外国に輸出した際には消費税を取ることができないでしょうから、その分政府が還付しますよ…」と。

ゆえにわが国においても、住友化学やトヨタなどの輸出事業者に対しては「輸出戻し税」という名の「輸出補助金」がしっかり還付されています。

上のグラフのとおり、輸出戻し税のために消費税の税収が赤字になっている税務署さえあります。

因みに、住友化学の売上に占める輸出額は6割を超えています。

その一方で、どれだけの中小零細企業や働く人たちが消費税によって苦しんでいると思っているのか!

このように見ますと、十倉会長が消費税の必要性を説く本当の理由が透けて見えてくるのではないでしょうか。(十倉氏は、この3月末で住友化学の会長を退任するらしい)