2月27日、川崎市議会の代表質問で自民党は本市財政当局に対し「プライマリー・バランスの均衡を重視するなら、税収増の局面であっても歳出改革を進める必要がある」と説いていました。
どうしてプライマリー・バランスを均衡させなければならないのか、その理屈を把握した上での質問ではなく、おそらくは「なんとなくそのほうがいいんじゃないの?」程度の質問にちがいない。
このプライマリー・バランスの導入を国において推進した一人が、あの竹中平蔵先生です。
プライマリー・バランスとは、公共事業費、社会保障費、教育費、防衛費等々の政策的経費をすべて税収だけで賄え、1円たりとも国債発行で賄ってはならない、という考え方です。
1円たりとも国債で賄えばプライマリー・バランスは赤字、税収が1円でも政策的経費を上回ればプライマリー・バランスは黒字ということになります。
その上で竹中先生は著書のなかで次のように述べています。
「通常の場合、金利よりもGDPが伸びは高くなるため、(経済成長すれば)財政健全化が進むことになる。しかしプライマリー・バランスが赤字のままだと、財政破綻する懸念が高まる。重要なのは、金利を支払う前の財政収支をゼロ以上にし、国債残高が増えないようにすることである。金利の方が経済成長よりも高い場合はこの通りにはいかないが、通常は金利以上に新規の国債発行をしないようにすれば、債務の負担は年々相対的に減ることになる」(『あしたの経済学ー改革は必ず日本を再生させる』2003年 竹中平蔵著)
要するに竹中氏は「金利よりも経済成長率のほうが高い情況でさえあれば、国債発行の抑制により政府債務(国債発行残高)は相対的に減っていく…」と言っています。
すなわち、プライマリー・バランス目標とは国債発行の抑制目標ということです。
しかし残念なことに、竹中先生は経済学者であるにもかかわらず国債発行残高が通貨発行残高であることを知りません。
昨日のブログでも申し上げましたとおり、貨幣の源は国債です。
政府が国債を発行してくれなければ、私たち日本国民は日銀券という現金を手にすることができません。
これは歴然たる事実で、政府の赤字(国債)こそが国民の黒字(現預金)をつくっているのでございます。
よって、プライマリー・バランスを均衡させる必要性など全くありません。
現に、プライマリー・バランスの均衡を目標としている国など日本以外には存在しない。
これは財務省も認めていることです。
「プライマリー・バランスを財政目標に取り入れている国は、先進国では日本以外には確認できませんでした」(財務省)
そもそも「国債発行=通貨発行」なのですから、プライマリー・バランスは通貨を発行させないための「通貨発行抑制目標」ということになります。
こんな馬鹿げた財政規律を「川崎市も遵守せよ」と川崎市議会の自民党は言っています。
巷には「通貨発行権を有しない地方自治体は国と異なり財政規律を重んじなければならない」という意見もありますが、私はそうした意見には与しません。
なぜなら、地方自治体もまた国と同様にスペンティングファースト(支出が先)であり、市税収入は市内GDPに相関するからです。
つまり、川崎市などの地方自治体においても支出は年度はじめから発生しますが、税収が入ってくるのは年度末です。
そして川崎市の財政規模は市内GDPの4分の1を占めますので、川崎市の財政支出具合によって市内GDPの規模が決まり、市内GDPの規模によって税収が決まるのです。
であるのなら、川崎市の財政運営はプライマリー・バランスを重視するのではなく、市内GDPへの影響こそを重視すべきです。