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議会報告 政治・経済

金属主義 vs 表券主義2018/09/30    

徳川時代、荻原重秀という幕府の勘定奉行として活躍した優秀な旗本がいました。

勘定奉行といえば、現在の財務大臣もしくは財務事務次官にあたる役職です。

既にこのブログで何度か取り上げていますが、懲りずお付き合い頂けましたらと存じます。

ご承知のとおり、当時の通貨は、金(きん)の価値に依存した金貨、あるいは銀の価値に依存した銀貨でした。

よって、金銀の産出量が低下すると、ふつうに貨幣不足に陥ります。

貨幣の不足は、むろんモノやサービスの余剰を意味します。

つまり金銀の産出量が経済成長に追いつかないと、物価(モノやサービスの値段)が下落するとともに、相対的におカネそのものの価値が上昇していきます。

即ち、貨幣不足によるデフレ経済が深刻化してくわけです。

そこで、荻原重秀は「貨幣は国家が造るところ、瓦礫を以ってこれに代えるといえども、まさに行うべし」という名言を述べ、管理通貨制度に近い発想で金銀の含有量を減らしました。

いわゆる「元禄の貨幣改鋳」を行ったわけです。

荻原重秀のような、こうした貨幣観を「表券主義」といいます。

要するに、「貨幣に内在する貴金属の価値など、貨幣の機能にはまったく関係がないんだ!」と荻原重秀は言いたかったのです。

その結果、幕府経済は按配よくデフレから脱却し、元禄景気を長期化させることに成功したわけです。

さて、いつも言うように、何より「デフレ経済」が恐ろしいのは、貨幣価値の下落を上回るペースで実質賃金が低下することです。

現在もそうです。

我が国がデフレに突入した1988年以降、物価と平均給与の変動率は下のグラフのとおりです。

これを「実質賃金の低下」といいます。

これを受けて2012年12月に誕生した第二次安倍政権は、量的緩和(日銀による市中国債の購入)によってマネタリーベース(日銀当座預金)を拡大する政策に転じたわけです。

※日銀当座預金 = 民間の金融機関が日本銀行にもっている当座預金

とろこが、既に6年近くにわたって量的緩和を続けていますが、未だ一向にデフレ脱却には至っていません。

上のグラフのとおり、日銀の物価目標(コアCPIで2%)には遠く及ばず。

因みに、「それでもコアCPIは0.9%にまで上昇しているじゃないか」という反論が来そうなので補足しますが、コアCPIにはエネルギー価格が含まれています。

ご承知のとおり、米国のイラン制裁などもあって原油価格は高騰しています。

原油価格の高騰に伴うエネルギー価格の上昇がコアCPIを引き上げているだけで、アベノミクスとは関係なしに依然として内需は低迷しています。

エネルギー資源の多くを輸入に依存している日本国では、本来、コアコアCPIという「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数」で目標インフレ率を設定すべきだと思うのですが、なぜか日銀はエネルギー価格が含まれる総合消費者物価指数(コアCPI)をインフレ率の指標にしています。

さて、あたりまえですが、どんなにマネタリーベース(日銀当座預金)を積み上げたところで、その貨幣が誰かによって実際に使われなければ物価は上昇しません。

即ち、総需要(名目GDP)の拡大が必要なわけです。

デフレ期に名目GDPを拡大できる経済主体は、政府部門だけ。

よって、積み上げられた日銀当座預金を政府が借りて使うことが必要です。

ところが、頑なにそれが行われない。

なぜか?

現在の我が国の政治家、官僚、学者、マスコミ、評論家たちの貨幣観がことごとく、荻原重秀の「表券主義」とは違い「金属主義」だからです。