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議会報告 政治・経済

米国の対中貿易制裁がもたらすもの2018/09/18    

トランプ米大統領が昨日(9月17日)、中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)を対象に第3弾の制裁関税を24日に発動することを発表しました。

これに対し「トランプは自由貿易の何たるかを解っていない!」みたいな中二病的な批判をしている識者が相も変わらず多々おられますが、自由貿易を絶対善とするグローバリズムの抱える様々な矛盾からトランプ米大統領が民主的に生まれたのですよ。

グローバリズムとは、あくまでもグローバル投資家及びグローバル企業の経営者たちが利を貪るに都合の良いシステムであって、各国の国民経済には有害なものでした。

世界的な実質賃金の低迷はその典型的所産です。

その歪みが各国のネイティブ国民たちに不満と不安をもたらし、やがて政治的(民主的)なパワーとなって、トランプ米大統領の誕生、英国のブレグジット(ユーログローバリズムからの離脱)、ヨーロッパでの反グローバリズム政党の躍進に繋がっています。

とりわけ米国については、そもそもトランプ大統領以前の米国の国家戦略に問題がありました。

冷戦が終わりソ連(東側陣営)の脅威が取り除かれたことで真の覇権国になった米国は、米国一極秩序を前提とした「自由貿易」のなかに中国を取り込む戦略をとりました。

「中国を米国が主導する自由貿易に参加させ経済的な利益を食らわせれば、米国様に牙をむくこともあるまい…」と。

米国が中国を2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟させたのは、そのためです。

その結果どうなったでしょうか?

グラフでお示しします。

上のグラフのとおり、中国の対米貿易収支はWTO加盟後、8倍以上に増えました。

これによって利を得た中国は軍事力を強化し、東シナ海、南シナ海での権益を拡大して、今や米軍を追い出そうとしています。

加えて、一帯一路構想に基づく中国の投資は、人民元建てでユーラシア大陸内陸部のインフラ網を整備することで当該経済圏からドルを排除し、人民解放軍の兵站力を強化しています。

WTO加盟の恩恵を受けつつも、それでいて中国は自由貿易のルールを守らない。

中国は、平然と知的財産を侵害し、高い関税障壁をつくりました。

例えば、中国の自動車関税は米国の10倍です。

あるいは中国政府が資金支援する国内企業に対し、土地や資本を助成しています。

何よりも、為替介入によって人民元の為替レート調整を行ってきました。

こうした自由貿易のルールを守らない行為を掣肘するのが、本来は覇権国(米国)としての役割であるはずなのに、それを怠って放置してきたわけです。

放置した結果、米国は相対的に国力を退潮させてしまいました。

であるからこそ、放置しないトランプ米大統領を支持する米国国民がいるのも頷けます。

とはいえ皮肉なことに、トランプが仕掛ける貿易戦争が更に中国の一帯一路構想を加速し、中ロ関係を強化しています。

一帯一路構想の加速と中ロ接近のシワ寄せは、当然のことながら我が日本国にきます。

しかも、やっかいなことがもう一つ。

中国は対米貿易収支を拡大することによって大量の米国債を保有してきました。

これによって優位に立ってきたのは、実は中国でなく米国です。

なぜなら、米国には『国際非常時経済権限法』という法律があるからです。

米国の安全保障や経済に重大な脅威が発生した場合、外国が米国に保有する資産を米国が一方的に破棄や無効化することが可能という法律です。

よって米国は、中国が保有する国債をいつでも紙屑にできる権限をもっています。

ところが、トランプ米大統領の仕掛ける貿易戦争によって、中国の対米経常収支が縮小していくことで中国の米国債保有量も縮小していきます。

となると、益々もって中国の米国依存度は低くなり、軍事的・経済的な自由度が増していきます。

その矛先は、むろん日本に向いてくることでしょう。

それなのに…

在りもしない「国の借金問題」などにとらわれて、デフレを放置し国力を弱め、何の対処もできない我が国です。