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議会報告 政治・経済

日本の電力供給システムを守れ2018/09/08    

今回の地震によって停電が続いている北海道。

ようやく最大360万キロワット程度の電力供給量を確保することができ、本日中には北海道全域において停電が解消される見通しです。

ただし、地震によって配電設備等が損傷している一部地域を除いてです。

道内最大の火力発電所である苫東厚真火力発電所においても設備の損傷が発見されており、ここが復旧するまでは綱渡りの供給体制が続くこととなりますので、しばらくは最大限の節電が求めれます。

全道の完全復旧には少なくとも1週間以上はかかるようです。

今回のブラックアウト(ほぼすべての発電所の一斉停止)を受け、今さらのようにメディアは電力システムの重要性を説いています。

今さら言うまでもなく、ユニバーサルサービスとしての安定的な電力供給は国民経済にとって生命線です。

意外と知られていない事実ですが、電力は在庫ができません。

「製造」「供給」「需要」を同時に行っているのが電力です。

今、その部屋で使われている電力は、今まさにつくられている電力なのです。

電力供給は理論的に1か0かの世界であり、供給の段階で何かしらのトラブルが発生すると瞬時にブラックアウトします。

だからこそ、今回のように発電所が一カ所停止しただけで、北海道すべての電力供給が途絶えてしまうわけです。

例えば、2010年に発生した中部電力四日市火力発電所の「瞬時電圧低下事故」をご存じでしょうか。

四日市火力発電所の故障事故により、その地域一帯の電圧が瞬間的に低下してしまったのですが、瞬間といってもたったの「0.07秒」です。

たった0.07秒間の電圧低下が生じただけで、例えば、東芝四日市工場は、一部の生産ラインが停止してしまい約100億円の損失を被っています。

また、コスモ石油四日市製油所は3時間にわたり停電し、トヨタ車体いなべ工場に至っては停電によって塗装ロボットのデータの一部が消失してしまいました。

ほか、四日市近辺に工場をもっていた三菱化学、トーソー、パナソニック電工などなど、大口企業だけでも146件の企業に被害をもたらしました。

このように、電力供給システムは国家安全保障の一つです。

であるからこそ、電力会社は民間企業だとしても半公営的な存在でなければならないわけです。

公共サービスを担う電力会社は、これまで発電、変電、送電、配電を一括して管理してきましたが、残念ながら、我が国の発送電が分離されるのをご存じでしょうか。(2020年4月~)

例によって「発送電分離」を推進したのは政府の御用組織(国民経済破壊組織)である「規制改革会議」なのですが、既に「発送電分離」の失敗を外国に見ることができます。

発送電分離は、1980年頃から米国や英国で実施されました。

以降、発電部門に多くの民間企業が参入するようになったのですが、典型的な失敗例は1996年に起きたカリフォリニア州での「電気事業の完全自由化」です。

自由化されるまでの電力会社は、発電から送電までを一括して請け負い、その時々に適した供給源を選択することでエンドユーザーの電気代を調整していました。

例えば石油が高騰したら、価格の高騰していないLNG(液化天然ガス)による発電量を増やすなどして、エンドユーザーの価格が跳ね上がらないように調整していたわけです。

ところが発送電が分離されてしまうと、そうした価格調整は不可能になります。

エンドユーザーへの価格転嫁を認められなかった送電会社は、ユニバーサルサービスと安定供給という義務だけを課され、やがて経営難に陥ります。

経営困難 となった送電会社は、送電網のメンテナンス費用をカット。

目先の利益に直結しないメンテナンスコストから真っ先に削減されるのが民営化の常です。

それでも間に合わず、結局、電力会社大手のパシフィック・ガス&エレクトリックは倒産してしまいました。

発送電分離の最大の問題は、送電会社の負担が過度に大きくなることです。

もともと米国は日本に比べて停電率の高い国です。
・米国の一需要家あたりの停電時間 292分/年
・日本の一需要家あたりの停電時間 16分/年
(※2006年の統計)

米国が高いというよりも日本の停電率が、けた違いに低いのですが、その理由は、実は「総括原価方式」にあります。

「総括原価方式」とは、要するに、石油や天然ガスやウランなどのエネルギーコストに一定の利益を乗せて電気料金を決定することができる仕組みです。

なので、非常に評判の悪い制度なのですが…

しかしながら、総括原価方式によって電力会社に経営的な余裕が生まれ、反公営的企業として「技術開発」や「メンテナンス」に費用を投じることが可能になりました。

だからこそ我が国では、そこそこの電力料金を維持しつつ、停電率を低くすることができたわけです。

このように日本の電力供給システムは欧米に勝る世界有数の優れたシステムです。

それをぶち壊すのが「発送電分離」です。

1980年代からはじまった欧米での発送電分離は、前述の理由から見直しが行われています。

なのに、我が国は周回遅れで発送電を分離しようとしています。

こうした事実をを正確に報道しようとしないメディアに、電力供給システムの重要性を語る資格があるのでしょうか。