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議会報告 政治・経済

EUの失敗に学ぶ「国境の大切さ」2018/07/14    

昔、平安貴族が花の都で和歌を詠んでいたころ、我が国対岸の大陸には鮮卑系民族王朝の「唐」という国が君臨していました。

その唐を、モンゴル高原あたりから脅かしていた北方民族が突厥です。

突厥は次第に西へ西へとユーラシア大陸を移動し、ついには現在のトルコあたりを中心にオスマン朝を建国します。

オスマン朝は、イスラム教を国教としながらも、多様な宗教や民族を受け入れ、中東の大半を版図とする大帝国として栄えました。

しかしながら、その後は幾度となくロシアの侵略にさらされ、第一次世界大戦の敗戦によって解体されたことで、現在の形にまで領土が削られるに至りました。

因みに、第一次世界大戦後の混乱を収拾し、外国の干渉を排除して現在のトルコ共和国建国を指導したのがムスタファ・ケマルです。

彼が「父なるトルコ人」(アタチュルク)と言われる所以です。

さて、改めて世界地図を俯瞰してみると、現在のトルコは中東の三大民族(アラブ人・イラン人・トルコ人)の一つとして、また世俗的イスラム国家の雄として、地理的にも政治的に中東と欧州とをつなぐ役割を果たしているがわかります。

シーパワーの米国が西側陣営の頭目なり、ランドパワーのロシアが東側陣営の頭目となって世界を二分していた冷戦時代、ロシアの地中海進出を恐れた米国は地政学上重要な位置をしめているトルコをNATOに加盟させました。

トルコはトルコで政教分離を徹底し欧米と近い価値観や政体を受け入れ、できうればEUに加盟したいと切望していたのですが、EU側は頑なにトルコのEU加盟を拒んできました。

対ロシア上、NATOまではいいけれど、EUはダメっ!…だと。

EUがトルコの加盟を拒んできた理由の第一は、トルコがキリスト教国家ではないこと。

第二には、トルコ人労働者が無制限に流入して欧州各国の雇用を奪い、実質賃金を引き下げてしまう恐れがあったこと…などがあったのだと思われます。

トルコみたいにイスラム教ではダメだけど、キリスト教なら加盟してもいい、というのがEUの基本的精神なのでしょう。

現にEUは、2004年に同じキリスト教(但し、東方正教会)国家群である東欧諸国の加盟を認めています。

ところがそのお陰で、東欧諸国から怒涛の如く低賃金労働者が流入することになりました。

因みに、英国のブレグジット問題はそこに根源的な要因がありました。

加えて、混迷を深める中東、あるいは人口爆発問題を抱えるアフリカからも難民がEUに押し寄せているのは周知のとおりです。

EUの総帥であるドイツのメルケル首相が「難民受け入れに制限はない」などと綺麗ごと(巧言)を表明し実施したものだから、ドイツには凄まじい難民が押し寄せています。

結果、ネイティブ・ドイツ人の実質賃金を引き下げ雇用を奪いはじめ、あまつさえ治安なども悪化したことからドイツ国民の移民や難民に対する不満が噴出しています。

その難民問題をめぐって、メルケル首相の率いるキリスト教民主同盟(CDU)とともに連立政権を支えるキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー党首(内相)が連立から離脱する可能性がでています。

ゼーホーファー内相の率いるCSUが連立から外れてしまうと、むろんメルケル連立政権は崩壊します。

そのCSUが拠点としている地域がバイエルン州です。

奇しくも、そのバイエルン州こそが、ドイツの中で最も移民や難民が流入した州です。

バイエル州では、メルケルの難民受け入れ政策に対する不満がマグマのごとく噴出しているようで、近々、そのバイエルン州において州議会選挙が控えています。

ゆえに、CSU党首のゼーホーファー内相はメルケル首相の野放図な移民受け入れ策を批判しているわけです。

メルケル首相とゼーホーファー内相は、お互いに妥協を図ったことで今はかろうじて連立は首の皮一枚で維持されているようです。

キリスト教であろうが、イスラム教であろうが、あるいは無宗教であろうが、ヒトやカネやモノが無秩序に国境を往来するような世界は実に悲惨な世界です。

ともに伝統文化を保ちながら近代国家を形成し、ロシアの南下に苦しんできた国として、日本とトルコの関係は地政学的にも歴史的にも共通点が多いことで知られていますが、結果的としてトルコは慌ててEUに入らなくて正解だったのではないでしょうか。

かつて鳩山何某という憲政史上最も〇〇っぽい総理大臣だった人が「東アジア共同体構想」を掲げていました。

要するに、「国境を無くして東アジア版EUをつくろう」というわけです。

まこと、正気の沙汰とは思えない愚劣な構想でした。

国境を大切にする国同士が、国境という一線をひきつつ、政治・経済・外交などお互いの利害を調整し、お互いの文化や伝統を尊重し合う国際関係こそが、結果としてすべての国の国民にとってより幸せな世界であることを私は確信します。