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議会報告 政治・経済

米国が引っ込めば中共が出張る2018/06/17    

偉大なる知者は、発想するスケールの次元が違います。

イギリス系地政学の祖であるハルフォード・マッキンダーは、ヨーロッパをユーラシア大陸の「半島」として捉え、海洋国家系地政学を確立したアルフレッド・マハンは、アメリカを太平洋と大西洋に挟まれた巨大な「島」として捉えました。

なるほどヨーロッパを「半島」として俯瞰すれば、ポーランド、バルト三国、ベラルーシ、ウクライナはまさに半島の付け根にあたり、その付け根が支配されれば半島そのものが支配されることになります。

つまり、この付け根を支配したランドパワー国がユーラシア大陸という世界島を支配するのだから、「この付け根を緩衝地帯にすることこそがイギリスの国益だ」とマッキンダーは結論づけたわけです。

一方、マハンは、アメリカはヨーロッパから遠く離れた「島」なのだから、「そう簡単にアメリカに攻め込んでくる国などない」「だから本土を守るための陸軍は少数でいい」「そのかわり海軍力を強化して海上交通路を確保するべきだ」と言って、かの有名な『海上権力史論』(1890年)を著しました。

『海上権力史論』においてマハンは、「歴史上、海を制したものが世界の覇権を握ってきた。だからアメリカも海軍を増強して海洋に進出すべきだ」と結論づけたのです。

その後、アメリカはマハンの教えを忠実に守り、「リメンバーメイン」とか言ってスペインに戦争を吹っかけフィリピンを強奪、そのついでにハワイやグアムを併合し、ついに太平洋における海上覇権を手に入れることになりました。

因みに、米西(アメリカ:スペイン)戦争の発端となった「米国戦艦メイン号爆発事件」ですが、1898年にアメリカは「自国民保護」を口実にスペイン領キューバに戦艦メインを派遣しました。

ハバナ港に停泊していた戦艦メインが、なぜか突然に大爆発を起こし沈没してしまいました。

「これはスペインの仕業にちがいない」となって、いつも通りのパターンですが「リメンバーメイン」と囃し立てて戦争に突入したわけです。

その12日後には、フィリピンのマニラ港に米国艦隊が出張って、湾内にいたスペイン艦隊をことごとく壊滅させています。

現代の最新鋭艦ですらも太平洋を横断するのに2週間以上かかるというのに…

まるで米国艦隊は戦艦メインの爆発を予見していたかのようです。

このように、偉大なる「戦略家」と阿漕な「戦術家」にタッグを組まれ標的にされたらたまったものではありません。

さて、マハンの優れた戦略論は実って、現在の米国は、世界70カ国以上の国や地域に約800の米軍基地を持っています。

それらの基地が、パクス・アメリカーナを支えてきたわけです。

ところが、イラク戦争とリーマン・ショック以来、米国は覇権国としての意志と能力を喪失しつつあります。

アメリカ国内には「海外に展開している米軍基地を断たんでいったん沖合に退き、当該地域の秩序を観察しバランスさせ、自国の国益が損なわされそうになったときのみ介入する」という戦略転換論があります。

いわゆる「オフショア・バランシング」です。

トランプ米大統領が、北朝鮮が検証可能で不可逆的で完全なる非核化を実現するなら「在韓米軍を撤退させてもいい」と応じている背景には、このオフショア・バランシングの考え方があるのだと推察します。

もしも在韓米軍が撤退すれば、当然のことながら中共が東シナ海、南シナ海に一層の圧力をかけてくることになります。

アメリカが引っ込めば、拡張政策をとる中共が出張ります。

それが地政学です。

2012年に、安倍総理が国際NPO団体プロジェクトシンジケートに発表した「セキュリティダイヤモンド構想」なる日米印豪による集団安全保障構想は、明かに対中包囲網を意識した実に地政学的な発想かと思われます。

それはそれで立派な構想だと思いますが、我が国としては、まずは独自の外交力(国際交渉力及びその背景としての軍事力)を高めるための富国強兵策に努めるべきだと思います。

そのためにもデフレからの脱却が何より求められますが、残念ながら我が国はお粗末な「骨太の方針2018」が閣議決定されるような深刻な事態なのでございます。