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議会報告 政治・経済

「経営のプロ」は必ずしも「経済のプロ」ではない2018/05/31    

本日(5月31日)、日本経済団体連合会(以下「経団連」)では総会が開かれ、日立製作所会長の中西宏明氏が会長に就任される予定です。

その中西新会長が、日本経済新聞のインタビューに対して次のようにお答えになっています。

1)経団連会長として取り組む施策の柱は?
…「経済成長、財政再建と社会保障改革などの構造改革、経済外交だ。外交は国の責任だが、国だけで国際関係がつくれる時代ではない。経済対話は経済界の方がやりやすい。対話の多層化がいまは重要だ」「デジタル技術をうまく社会基盤として活用すれば、日本は成長の機会がすごくある。埋蔵される化石燃料はいずれなくなる。原発は人類の将来に必要な技術だ」

2)日本は財政再建が急務では?
…「ボトルネックは社会保障関連の費用。老齢化し、人口が減り、構造的に無理が出ている。もう1歩も2歩も踏み出さないといけない。痛みを伴う改革もできる」

3)安倍政権を評価しますか? 政権との関係をどう築きますか?
…「極めて高く評価する。6重苦が解消され、外交力で日本の立場が大きく改善した。課題はある。スキャンダルめいた話ではもうちょっと上手に対応すればいいと思う」「対立して厳しいことを言うのが経団連の役割とは考えない。率直に意見交換できる関係をどうつくるか。政治のコストを企業が負担していくことには共通の理解がある」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31176780Q8A530C1EE8000/

中西さんが安倍政権を評価している理由の第一は、おそらくは「円安」です。

アベノミクス第一の矢(日銀による大規模な量的金融緩和)で、為替は円安になりました。

量的金融緩和とは、要するに日銀が民間金融機関の保有している国債を購入することで貨幣(日銀当座預金)を発行することです。

因みに「日銀当座預金」とは、民間金融機関が日銀内にもっている当座預金のことです。

つまりバランスシートでいえば、民間金融機関が保有していた「国債」という資産が、日銀による国債購入により「日銀当座預金」という資産に変わったわけです。

日銀当座預金という貨幣量の拡大が円安期待をもたらし、結果、為替市場において円安になったわけです。

円安は、むろん日立製作所のような輸出産業にとって追い風になりました。

また、株式市場にも追い風になりました。

日本の株式市場では、取引の7割から8割を外国人投資家が占めています。

その外国人投資家にとって、円安は日本株の割安となり、円高は日本株の割高になります。

このことが、円安が日経平均の上昇につながった最大の理由です。

これら円安による「株価の上昇」と「輸出産業の増収」とが、中西新会長による経済面での安倍政権への高評価につながっているのだと思われます。

しかしながら、もしも一転して円高基調になってしまうと、外国人投資家は容赦なく日本株を売りたたいて資金を引き揚げていきますので、日本の株価は暴落することになります。

何しろ、外国人投資家が取引の7割以上を占めていますので。

どうやら中西新会長は、前会長の榊原氏と同様に政府の「財政再建」を求めています。

ここでいう財政再建とは、政府債務対GDP比という国際基準ではなく、おそらくは「単年度でのPB黒字化」のことだと思われます。

とすれば、政府の国債発行が抑制されることは必至です。

デフレ期であるにもかかわらず、単年度でPBを黒字化しようとすれば、どうしても歳出(国債発行)を抑制せざるを得なくなります。

であるからこそ、単年度でのPB黒字化など目指してはならないのですが、きっと中西新会長は「それを目指せ!」と要求するのでしょう。

とはいえ、上のグラフのとおり、既に国債の半分ちかくを日銀が保有しています。

即ち、これ以上、日銀に国債を売ってくれるヒトがいません。

民間金融機関にしても、保険・年金基金にしても、彼らは安全資産で長期資金を運用しないといけませんので、そのすべてを日銀に売ってくれはしないのです。

要するに、日銀が購入する国債が枯渇しています。

経団連が財政再建を要求するように、政府が国債発行(財政支出の拡大)を抑制すればするほど市場の国債が枯渇しますので、やがては日銀による量的金融緩和(日銀による国債購入)が強制終了されることになります。

デフレを脱却できないまま、もしも量的金融緩和が終了されると、まちがいなく為替市場は円高になります。

むろん、デフレ下での円高は、輸出産業の収益を圧迫し、日本株を暴落させることになるでしょう。

中西新会長をはじめ経団連の皆さんは、そのことを理解されていないご様子です。

仕方ありません。

彼らは、あくまでも「経営のプロ」であって、「経済のプロ」ではないのですから。