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議会報告 政治・経済

実質賃金を低迷させている「株主資本主義」2018/05/12    

野田聖子総務大臣が、ロイターのインタビューに対し次にように応じています。

1.金融政策について…
「マイナス金利のような異次元の金融緩和政策は、長く続けてはいけない」

2.日銀が物価目標を設定することについて…
「物価2%ありきではなく、経済の回復ありきの2%という原理原則に戻したほうがいいのではないか」「成長のためには個人消費が鍵となり、個人消費拡大には賃金上昇が重要だ」

はて?

とりあえず、ツッコミを入れておきます。

まず、日銀はべつに異次緩和(量的緩和)を続けたくて続けているわけではありません。

政府が財政支出してくれないがためにインフレ率(物価)が上昇せず、日本経済は再デフレ化しています。

だから、量的緩和を止めるわけにはいかないのです。

今もしも日銀が量的緩和を止めたらどうなるでしょうか。

間違いなく急激な円高になります。

そうなると株価は暴落し輸出企業の収益を圧迫、土地バブルも弾けて消費は益々低迷、日本経済は壊滅的状態になります。

だから日銀は量的緩和を止めるわけにはいかないのです。

とはいえ、政府の緊縮財政によって既に市場の国債が枯渇しており、量的緩和の強制終了の日が刻々と迫っています。

つまり、異次元緩和(量的緩和)を続けたくても続けられないデッドラインが迫っているんですよー、野田大臣!(「続けるべきじゃない」なんて言ってる場合か)

次に、「物価2%ありきじゃなく、経済回復ありきの2%の原則…」って何でしょうか?

おそらくは「物価の上昇よりも、2%の経済成長を重視せよ」と言いたいのでしょう。

しかしながら、日銀が物価の上昇を重視しているのは、デフレを脱却するためです。

なぜデフレを脱却しなければならないのかというと、デフレを脱却しなければ経済成長できないからです。

物価の上昇 ⇒ 賃金の上昇(デフレ脱却)⇒ 経済の成長

これが日銀の描く再生シナリオであり、これ以外の選択肢はありません。

野田大臣は「物価は後回しでいい…」みたいに言っていますが、おそらくはデフレの意味がお解りになっておられないのでしょう。

そして最後に、成長の鍵となるのは「消費」ではなく「投資」です。

野田大臣の言う「消費拡大」が「政府消費の拡大」のことを意味しているのなら理解できますが、長期的なデフレ状態にあるなかで民間消費に期待しているのなら誤りです。

民間消費を拡大させるためには、実質賃金を上昇させなければなりません。

では、我が国の実質賃金は今どうなっているか…

上のグラフのとおり、実質賃金が下がり続けているなか、どうやって民間消費は拡大するのでしょうか。

成長への期待が高まるからこそ国民は消費を拡大するのであって、なんの期待もないなかでデフレ脱却のために消費を拡大してくれる国民などいません。

しかしながら一方で野田大臣は、企業利益を内部留保に向かわせず「基本給にシフトされるような流れを作っていかなければならない」との考えをインタビューの中でお示しなっておられます。

これについては全く同感です。

下のグラフのとおり、日本企業の内部留保(企業が保有する現金・預金)は増え続けています。

デフレにより、企業の投資機会が少ない証拠です。

その一方で、下のグラフのとおり労働分配率は下がり続けています。

労働分配率とは、企業の粗利(国民所得)に占める雇用者報酬の割合のことです。

また、企業の株主への配当金の推移をみてみますと、下のグラフのとおり右肩上がりで増えてきました。

つまり、1990年以降に進められた、いわゆる「構造改革」(日本を株主資本主義にするための一連の改革)によって、残念ながら企業の利益は労働者には向かわず、株主配当、自社株買い(自社の株価を引き上げるため)、内部留保に向かってきたわけです。

因みに、株主資本主義の蔓延以降、企業はTOB(株式公開買い付け)などの企業買収に備え、できるだけ内部留保を厚くしておく傾向にあります。

実質賃金を上昇させるためには…
①生産性の向上
②労働分配率の上昇
…の二つが必要です。

①は「投資」(公共投資+設備投資+技術開発都市+人材投資)の拡大で達成可能です。

しかしながら②を実現するためには、その企業の株主と経営者に対し、どのようにしてインセンティブを与えるのか、あるいは企業経営にどこまで政府が介入(規制)できるのかが問題になります。

野田大臣の具体策に期待します。