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議会報告 政治・経済

横浜市議会の不見識2018/04/13    

去る3月23日、横浜市議会において『ぜんそく患者に対する実態調査及び医療費助成に関する意見書』が全会一致で採択され、当該意見書案が国に提出されました。

この意見書はおそらく、国に「喘息患者医療費救済制度」の創設を求めている特定の団体からの要請に横浜市議会が全会一致で応じたものであろうと推察されます。

意見書を読むと、いっけんご尤もそうな内容と思われそうですが、極めて不見識な意見書です。
http://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/pdf/ikensho/iken300323.pdf

私の知る「喘息患者医療費救済制度」の創設を求めている団体は、あくまでも「大気汚染こそが喘息の原因だ」と言い張っていますが、国(環境省)が30億円以上もの費用を投じて行った疫学調査(『そらプロジェクト』)、及び専門家の見立てによれば、必ずしも大気汚染が主因だとは言えないことが既に明らかになっています。

特に『そらプロジェクト』の結果から、幼児と成人では因果関係そのものが有意差なしと否定されていますし、児童においては有意差は認められるもの大気汚染の喘息発症に及ぼす影響の大きさについては明確なことは言えないとなっています。

喘息の発症原因については、オッズ比の大きさをみる限りでは大気汚染よりもペット飼育等との関連性の方がはるかに大きく、この点についても新聞報道などで既に明らかになっていますが、喘息の専門家から「喘息等アレルギーの最大の原因はダニアレルギーである」との見解が示されています。

また、『そらプロジェクト』の委員長を務められた、我が国における喘息の第一人者が国の委員会で「現在の大気の状態では喘息発症のリスクとなるとは考えにくい」と、公式に述べておられます。

因みに、東京都はこの『そらプロジェクト』の結果を受けて、東京都が行っている「成人ぜん息医療費助成制度」の将来的な廃止を視野にいれた大幅縮小策を打ち出しており、既に都議会での承認を得ています。

横浜市の意見書には「(国に対して)実態調査を行え」とありますが、前述のとおり、国は既に30億円以上もの費用を投じて、『そらプロジェクト』という本格的な実態調査を行っているのです。

横浜市議会は、そんなことも知らないのか!

しかも、国では既に平成29年3月に「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(以下、アレルギー対策基本指針)」を策定しており、喘息をアレルギー性疾患の一つと明確に位置付け、正しい治療法や知識の普及に全力をあげています。

この指針は、日本を代表するアレルギーや環境保健の専門家、及び市民団体が一体となって国の委員会として作成したもので、我が国においては喘息患者を含めたアレルギー性疾患を患っている方々のための極めて重要な基本指針です

その中で国や自治体が果たすべき重要な役割を4つ挙げています。
① アレルギー治療の質の均てん化(標準医療の普及)
② アレルギー治療の拠点病院の整備
③ 正しい知識の啓蒙普及活動
④ 大気環境については環境基準の維持

まず①は、アレルギー治療についてはガイドラインに沿った適切な治療(標準治療)がどこでも受けられることとしています。

特に喘息による死亡が減った最大の要因は、国の報告ではこの喘息治療の標準化の広まりと最も関係があるとされ、さらなる「広まり(普及)」が求められているところです。

さらには、喘息の医療費助成制度がある川崎市や東京都における喘息による死亡率をみますと、助成制度のないそれ以外の都市よりも低いということはありません。

つまり、喘息死亡と医療費助成との間には明確な関係は見出せないのです。

次いで②は、地域のアレルギー治療レベルを上げるために、アレルギー治療の拠点病院づくりの必要性を言っています。(各都道府県に一か所以上)

次いで③は、国民を惑わすような誤った情報(「喘息の主因は大気汚染だぁ~」みたいな)を流さないことを求めています。

最後の④は、基本的には現在の環境基準を維持せよ、ということです。

既に現在、環境基準は概ね満たされているのですが、年によっては中国からの越境大気汚染によってPM2.5の数値が上がることがあります。

当然のことながら、これに対する対策は必要でしょう。

しかし今や、名だたる専門家がアレルギーの最大の原因はダニアレルギーであると言っています。

このアレルギー疾患対策基本指針は、「アレルギー疾患は他の慢性疾患と同様に罹患者に経済的な負担が大きい」と述べていることから、アレルギー疾患の一つである「喘息」のみになぜ医療費助成制度がなければならないのか、という疾病の取り扱いへの「不平等さ」についても改めて真剣に考える必要があろうかと思われます。

横浜市議会議員の中で、この指針を読んだ議員さんはいったい何人おられるのでしょうか。

因みに、去る平成29年10月13日に埼玉県議会が国に出した「大気汚染による健康被害に係る救済措置を求める意見書」の中に、「平成26年の厚生労働省の調査によると、大気汚染などによるぜん息等の患者が今なお100万人以上いるとされている」などと書かれているのですが、厚生労働省に確認すると、このようなデータは存在しないとのことでした。

つまり、厚生労働省の平成26年患者調査による喘息患者数に、厚生労働省が言ってもいない「大気汚染などによる」という文言を、埼玉県議会は勝手に挿入して、あたかも厚生労働省が「大気汚染により喘息患者が100万人もいる」と言ったかのように思い込ませようとする意図を感じます。

しっかりした事実を確認もせずいい加減な情報に基づいた意見書を出す埼玉県議会の不見識にもあきれる次第です。

こうした地方議会の不見識な「意見書」こそが、正しい喘息治療の普及の妨げになります。