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議会報告 政治・経済

「自由貿易」という名のグローバリズム2018/03/20    

昨日(19日)の夜(日本時間)、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開幕しました。

トランプ米大統領が保護主義的な動きを強めていることから、貿易問題が最大の焦点となる見通しです。

昨日の記者会見において日銀の黒田総裁は「G20は常に自由貿易の重要性を訴えているので、(その認識は)しっかりと国際的に受け入れられている」と言っています。

『G20、自由貿易の重要性を訴えていくことになる=黒田日銀総裁
https://jp.reuters.com/article/g20-kuroda-0319-idJPKBN1GV1XX

黒田東彦日銀総裁は19日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開幕する20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、「G20は引き続き自由貿易の重要性を訴えていくことになるのではないか」との認識を示した。(後略)』

「自由貿易」 と「保護貿易」、どちらが善でどちらが悪かという不毛な議論は、いいかげん止めてもらいたい。

そもそも、完全なる「自由貿易」なんてあり得ないし…

いわゆる「自由貿易」を正当化している定理は、主流派経済学の言う「比較優位論」です。

イェール大学の浜田宏一氏などは、この比較優位論をもってTPPを推進しています。

比較優位論とは「貿易取引をする二カ国が自由貿易を通じて相対的に得意とする産業分野に特化することで、お互いの経済厚生を最大化することができる」という仮説です。(あえて仮説と言っておきます)

例えば、自由貿易を約束したA国とB国があったとします。

A国はワインの生産性が高く、自動車の生産性が低い。

一方、B国は自動車の生産性が高く、ワインの生産性が低い。

この場合、A国はワインの輸出に特化し、B国は自動車の輸出に特化する。

そうすればAB両国はお互いに経済厚生を最大化できる…これが比較優位論です。

実にご尤もそうな理屈です。

ところが、この理屈(比較優位論)にはいくつかの前提条件が設定されていることを見逃してはならない。

第一に、A国B国ともに、完全雇用が実現していることです。

現在の先進諸国で、完全雇用が成立している国なんてありましたっけ?

つまり、A国の自動車産業に従事する人たち、あるいはB国のワイン産業に従事する人たちは失業しても必ず何か別の産業に従事することができる、というものです。

昨日までA国で自動車を作っていた人が、その自動車会社が潰れようとも、次の日からは立派なワイン産業従事者になっている、という話しなのです。

そんなことあり得るのか?

第二に、モノやサービスを生産する要素は「労働」以外には存在しない、という更に驚かされる前提です。

つまり、労働以外の生産要素である「資本」も「技術」も存在しない、というのが比較優位論の前提となっています。

第三に「労働は国内を常に自由に移動できる」、第四に「運送費用はゼロ」、第五に「資本移動の自由がない」…ここまでくると、ほとんど妄想の世界です。

これら第一から第五までの妄想的で非現実的な前提条件が整ってはじめて「比較優位論」が成立します。(実は他にも非現実的な前提条件があるのですが省略します)

その比較優位論をもって、主流派経済学は「自由貿易」を正しいとしています。

これだけで、主流派経済学が現実の経済を語ることのできない理由が解ります。

また、よく言われているのが「戦後の日本は自由貿易で高度経済成長を成し遂げたぁ~」仮説です。

たしかに戦後、我が国は驚くべき高度経済成長を成し遂げました。

でも、その時代の貿易秩序は、ご承知のとおりGATT(関税と貿易に関する一般協定)体制です。

日本がGATTに加盟したのは1955(昭和30)年ですが、GATTは果たして自由貿易体制と言えますでしょうか。

まず、GATTは基本的に農業分野やサービス分野を自由化の対象外としていました。

それに「セーフガード措置」「輸出自主規制」「アンチダンピング課税」のほか、貿易自由化による激変を緩和するための、いわゆる「激変緩和措置」を加盟国に認めていました。

こうしてみますと、GATTの実態はむしろ「一種の保護貿易協定」でした。

GATTは、第二次世界大戦後、ブレトン・ウッズ体制と呼ばれる国際経済体制のもとでスタートしたのですが、ご承知のとおり、ブレトン・ウッズ体制は1971(昭和46)年のニクソンショックによって終わりを告げたことから、GATTはワシントン・コンセンサス体制のもとで現在のWTO(世界貿易機構)に移行しました。

そこで、ブレトン・ウッズ体制(GATT体制)とワシントン・コンセンサス体制(WTO体制)における、平均経済成長率と平均失業率をそれぞれ比較してみます。

差は、歴然としています。

黒田総裁、あなたの言っている「自由貿易」は、ひょっとして「グローバリズム」ではないのですか?

もしそうだとしたら、それを望んでいるのは、あくまでもグローバル企業やグローバル投資家たちであって、各国の国民はだれも望んではいないはずです。

なぜなら、グローバリズムは各国の供給能力を毀損し、所得格差の拡大をもたらすなどして国民経済を破壊しているからです。