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議会報告 川崎市政

連続立体交差事業とおカネ2018/02/17    

本日は地元ローカルな話題です。

私の住む川崎市多摩区では、小田急線とJR南武線の二つの鉄道がそれぞれに東西南北を貫いています。

東急東横線や田園都市線がそうであるように、あるいは京急蒲田駅周辺がそうであるように、現在では都心部を走る鉄道はたいていの場合は連続立体交差事業が進められており、地上を走る鉄道は高架化もしくは地下化され、ことごとく踏切が除去されています。

ところが、多摩区を走る小田急線とJR南武線の二つの鉄道は連続立体交差事業が行われていないがために、未だ大手を振って地上を走っています。

結果、多摩区だけでJR南武線の踏切が22カ所、小田急線の踏切が10カ所、合計32カ所もの踏切があります。

踏切及び地上を走る線路は街を分断します。

このことが地域経済に与える影響は小さくありません。

例えば、お蕎麦屋さんやお弁当屋さんの出前可能な範囲が線路や踏切によって限定されてしまうように、街が分断されてしまうと物流や人の移動は絶対的に制約されます。

また、朝夕ラッシュ時の踏切は人と車で溢れかえり、利用者にとっては命がけの通行です。

現在、川崎市では京急大師線の連続立体交差事業が行われており、この事業にある程度の目途がつくと、今度はJR南武線の武蔵小杉駅以南(武蔵小杉駅~川崎駅)の連続立体交差事業が行われる予定です。

それと同時に、あざみの駅と新百合丘駅とを結ぶ横浜市営地下鉄三号線の延伸事業への財政支出が発生することから、残念ながら多摩区内における連続立体交差事業は今後20年以上はあり得ないという話しになります。

なのでそれまで、小田急線は川崎市域の部分だけ地上を走ることになります。

一方、JR南武線については、溝ノ口駅以北の各駅(津田山駅、久地駅、宿河原駅、中野島駅、稲田堤駅)の「橋上駅舎化」が既に計画決定されていることから多摩区では永遠に地上を走ることになります。

これまで、JR南武線の溝ノ口駅以北(溝ノ口駅~矢野口駅)及び小田急線の川崎市域部分で連続立体交差事業が行われてこなかった背景には、制度的な理由があります。

連続立体交差事業は、総事業費の約10%のみを鉄道会社が負担し、残りの費用を当該自治体(川崎市)と国(国土交通省)とで折半します。

なので、連続立体交差事業が事業化されるために必要なのは…
①事業主体である自治体(川崎市)のやる気
②国(国土交通省)の認可
③地域住民の協力
…です。

JR南武線の溝ノ口駅以北(溝ノ口駅~矢野口駅)の連続立体交差事業が実現しない主な理由は…
①主要な幹線道(国道246号や鹿島田菅線)がJR南武線と既に立体交差になっていること
②そのため、当該事業が国による費用対効果の算定で基準をクリアしないこと
…の二つです。

川崎市北部における連続立体交差事業の優先順位が低くなってしまうのは、連続立体交差事業は基本的に自治体の財政力から「一時期・一事業の原則」があるからです。

財政力に限界のある自治体にとって、連続立体交差事業は大規模事業と考えられており、国は一度に複数の連続立体交差事業を認可することはありません。

であるからこそ、自治体は優先順位をつけざるを得ないわけです。

しかしながら、連続立体交差事業は国が言うほどの大規模事業ではありません。

例えば、いま計画が進められているJR南武線の武蔵小杉駅以南(武蔵小杉駅~川崎駅)の連続立体交差事業の総事業は1,467億円です。

1,467億円のうち約10%は鉄道会社の負担で、残りの90%を国と自治体(川崎市)でほぼ折半します。

といって川崎市はその負担のすべてを一般財源で賄うわけではありません。

川崎市負担分の約90%は市債の発行で賄うことになります。

市債発行というと、パブロフの犬のように「後世にツケを残すのかぁ~」と叫びだす方もおられますが、行政の負債と個人の負債はその性質を全く異にします。

例えば、発行した市債の半分近くは「借り換え」が可能です。

つまり、個人が住宅ローンを組むのとはワケが違うのです。

個人の債務は予算制約式というもので、個人の寿命には限りがあるゆえに与信限度が設定され、よほどの事由がないかぎり個人には「借り換え」は認められないわけです。

ところが、行政という組織には寿命はなく基本的に永続する法人です。

これをゴーイングコンサーンと言います。

要するに行政はゴーイングコンサーンであって、個人債務のような予算制約式は当てはまらないのです。

いたずらに行政負債を問題視している人たちの多くは、このゴーイングコンサーンを無視して予算制約式を前提にされています。

であるからこそ、行財政と家計簿とを混同されてしまうのでしょう。

さて、JR南武線の武蔵小杉駅以南(武蔵小杉駅~川崎駅)の連続立体交差事業の予定工期は概ね20年です。

前述のとおり、川崎市負担分の約90%は市債発行によって賄われますので、一般財源の負担は約10%になります。

だとすると、川崎市が毎年負担しなければならない一般財源はいくらになるでしょうか?

驚くなかれ、試算してみると、たったの3億円です。

個人にとって3億円は大金ですが、1兆5千億円もの予算規模をもつ川崎市にとってそれほどの大金なのでしょうか。

因みに、「そうは言っても、国(政府)にも借金が残るじゃないかぁ~」と言われそうですので断っておきますが、100%自国通貨建て(円建て)で国債を発行している日本政府がデフォルト(債務不履行)する可能性はゼロ%です。

しかも我が国は、インフレ率が0~1%で推移するほどに供給力の有り余るデフレ経済です。

よって政府の負債(国債)を、政府の子会社である日本銀行がすべて買い取った瞬間に、悪性インフレに陥ることなく政府債務はゼロになります。

マスコミが騒いでいる「ニホンのシャッキン問題」など、その程度の話しに過ぎず、いわゆる「日本財政破綻論」など、ほぼファンタジーの世界なのです。

確実に言えることは、多摩区内を走る鉄道を連続立体交差化できない理由は決して「おカネの問題ではない」ということです。

因みに、京急蒲田駅周辺で行われた高架化事業は、総事業費が約2,400億円でした。

京急蒲田駅周辺での高架化事業は幸いにして用地費用等の支出が少なかったため、約2,400億円のほとんどが公的固定資本形成としてGDP(国民経済)に計上されました。

つまり、蒲田駅周辺の高架化事業によって最低でも約2,400億円分ものフロー効果が創出されたことになります。

それに効果はフロー効果だけではありません。

蒲田駅周辺の踏切除去の効果は、今後、何十年も続きます。

例えば、物流や人の移動が効率化されることで地域経済の生産性(生産者一人あたりの所得)が高まります。

その生産性向上の効果が1年で100億円あったとすると、即ち年間100億円のGDP押し上げ効果が発揮されたとすると、24年で総事業費(約2,400億円)の元が取れるという計算になります。

いわゆる公共事業のストック効果です。

それでも公共事業は「無駄」なのでしょうか。

大事なのは経済(国民の所得=GDP)の成長であって、おカネなんかじゃない。