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議会報告 政治・経済

職と食と実質賃金2018/02/01    

1月30日、トランプ米大統領の一般教書演説が行われました。

そのとき議場には、自家製の松葉づえを高く掲げ、トランプ米大統領の演説に満場の拍手をおくる脱北者のチ・ソンホ氏の姿がありました。

チ・ソンホ氏は、片腕と片足を失いつつも、2006年に北朝鮮の独裁体制から逃れた脱北者です。

その「脱北者の悲劇」をトランプ米大統領が一般教書演説で紹介して北朝鮮を痛烈に批判したわけです。

大統領が一般教書演説でチ・ソンホ氏を紹介した背景には、おそらく、来る中間選挙にむけ、北朝鮮への軍事行動による支持率の向上という内政的狙いがあったものと推察します。

それはさておき、北朝鮮の悲劇は「脱北者は脱北できただけでも幸運だ」と言われるほどに、脱北者の悲劇よりもさらに悲惨な実態があることです。

例えばChinaに逃れても、最近では捕まれば例外なく北朝鮮に強制送還され、確実に処刑されます。

僅かな成功確率に賭けて脱北するか、もしくは脱北しないまま餓死するか、という恐ろしい選択肢しかないのですが、それでいて単純な二者択一でもありません。

なぜなら、僅かな成功確率に賭けての脱北を試みることができるのは、貧困と飢餓に喘いでいる人々ではなく、貧困の中でも比較的に裕福な人たちだからです。

飢餓と貧困の最下層にいる者は、脱北できる体力も財力も完全に失っているということです。

即ち、最下層の人たちの多くは脱北する自由すらないのです。

平成10年、「飢餓と公共の役割」に関する研究でノーベル経済学賞を受賞したインドのアマルティア・センは、全ての飢餓や貧困は、例え自然災害を契機とする場合であっても、最終的には「不平等」と「自由の欠如」という政治的要因に全て起因することを統計的に証明しました。

その上で彼は「貧困とは自由の欠如である」とされています。

なるほど、そのとおりだと思います。

作家・塩野七生さんも「政治とは民のショクを満たすことだ」と言っています。

この場合のショクは「食」であり「職」のことです。

人間は「食」が無ければ生きていけないのはもちろんのこと、「職」がなければ「食」(所得)を確保することができない。

これもまた、なるほど、そのとおりだと思います。

要するに、政治に課せられた基本的使命は、いかにして国民に所得の獲得機会をつくることができるかです。

詰まるところ、政治の目的は「国民の所得を増やすことだ」と考える「経世済民」こそが基本であることに尽きます。

その国民の所得をもっと具体的にいえば「実質賃金」になります。

では、我が国の実質賃金の推移はどうでしょう。

長期的にみますと、20年前にデフレに突入して以降、実質賃金は15ポイントも下がってしまいました。

この20年間、我が国の政治は、経世済民という政治本来の目的を達成することに失敗しています。

国民の所得(実質賃金)が増えずして、国民が豊かになっているとは絶対に言えないはずです。

そして国民が豊かにならずして国が豊かになることもあり得ません。

何よりも、国が豊かにならなければ、国民生活の安全(国防)を維持することすらもできなくなります。

ネオリベラリズムが理想とする「1% vs 99%」の世界で「1%」だけが豊かになっても、それは経世済民とは言えないのです。

こういうことを言うと、「それでも我が国では脱日するだけの豊かさがあるからいいじゃないか」などと本気で言われそうで怖い。