〒214-0012
川崎市多摩区中野島3-15-38-403
TEL:044-934-3302 / FAX:044-934-3725



議会報告 川崎市政

健全財政論は財政を健全にしない2017/10/14    

行財政を家計簿で論じるのは愚の骨頂です。

その典型例が次のような記事です。

『与野党、緩む財政規律=「ばらまき」色濃い公約【17衆院選】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017101201072&g=pol

衆院選は2019年10月の消費税増税への対応が大きな争点だ。自民、公明両党は予定通り10%に引き上げ、財源の一部を教育無償化などに転用すると主張。野党は増税の凍結・反対を訴えている。ただ、各党は国民に「痛み」を強いる歳出削減には及び腰。公約は総じて「ばらまき」色が濃く、財政規律はさらに緩む恐れがある。(後略)』

時事通信社に言わせると「消費税の増税を主張しない人も、増税を主張したとしてもそれを借金の返済に回さず何らかの支出に充てようとするする人たちはみんな財政規律を考えない人だ」ということです。

時事通信社に限らず、どのメディアも概ね同じような見解で報道しています。

通貨発行権と徴税権をもつ政府と、それらの権限を有していない家計とを同列に論じる典型的な“家計簿脳”です。

家計簿脳で政治や財政を論じる人たちは基本的に不真面目な人たちなので、まともに相手をしないほうが得策なのですが、おそらくは多くの国民の皆さんがこの種の財政健全論なるインチキレトリックに影響されていることと存じますので、ここはキッチリと断罪しておかねばと思います。

そこで、アバ・ラーナーという優秀な経済学者をご紹介します。

財政に関する理解は、概ね「財政収支は常に均衡しなければならない」という、いわゆる健全財政論が一般的ですが、アバ・ラーナーは“機能的財政論”という健全財政論とはまったく異なる概念を提示しました。

即ちアバ・ラーナーは「財政が適切であるか否かは政府の累積債務が大きいか小さいかではなく、国民経済がデフレや過度なインフレで苦しんでいるか否か、あるいは失業率が高いのか低いのか、あるいは実質賃金は上がっているのかいないのかなどなど、国民経済の現状を示す指標によって判断すべきだ」と言っています。

例えば、現在のように国民経済がデフレで苦しんでいる場合、デフレとは需要の不足から物価が下落(貨幣の価値は上昇)していく現象であるがために、その不足した需要を埋めることで貨幣の価値を下げる政策が求められます。

よって、不足した需要を埋め貨幣価値を下げるには政府は財政支出を拡大(財政赤字の拡大)すべきだ、というように健全財政論者(家計簿脳)には考えられないような結論が導かれます。

健全財政論者は財政のバランスを重視しますが、機能的財政論者は需要と供給のバランスを重視ます。

つまり、機能的財政論の目的は、財政の健全化ではなく経済の健全化です。

経済が健全化すると自ずと財政は健全化しますが、財政を健全化しようしても残念ながら財政も経済もともに健全化しません。

例えば、需要不足のデフレ期に財政支出を引き締めてしまうと、余計に需要が減退して名目GDPが縮小します。

名目GDPが縮小すると必ず税収が不足します。

昨日のブログでも書きましたが、
税収 = 名目GDP × 税率
ですので…

なので機能的財政論は、デフレ期には支出を拡大して民間部門の貨幣量を増やすことで経済を健全化(デフレ脱却)させ財政を健全化させようとします。

逆に、需要過多になってインフレ率が高まりはじめたら、今度は支出を削減(例え増税など)して、民間部門から貨幣を回収することでインフレを抑制します。

このように、財政収支を機能的に調整することによって民間部門の貨幣流通量をコントロールするのが機能的財政論です。

100%自国通貨建て(円建て)で国債を発行でき、かつ世界一の対外純資産国になるほどに経常収支が常に大黒字の日本国においては、財政支出(財政赤字)の拡大に何の心配も要りません。

どうして国債を100%自国通貨建て(円建て)で発行し、経常収支が黒字だと財政赤字に何の心配も要らないのか?

そういう根本的なことを理解していない政治家、官僚、学者、ジャーナリストらが、政府の負債残高を絶対額でみて「財政規律がぁ~」と言って無責任に破綻リスクを煽っています。

現在、川崎市では衆議院総選挙と並行して川崎市長選挙が行われているのですが、その市長選挙候補者の一人が「このままでは川崎市は財政破綻する~」というデタラメを言って財政規律の健全化を主張しています。

川崎市には政府のような通貨発行権はありませんが、過日の市議会における私の質問に対して川崎市の財政局長は「川崎市の破綻リスク(債務不履行リスク)はほとんどない」と答弁しています。

それどころか、むしろ川崎市は財政を健全化しすぎて市内経済のデフレを助長しています。

下のグラフのとおり、この10年以上、川崎市の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は大黒字です。

どのようにして、この黒字を市民経済と市民福祉の向上のために吐き出させるかが、現今市政の最重要課題なのです。

これをワイズスペンディング(行政による賢い支出)といいます。

このワイズスペンディングという言葉は希望の党の公約にも載っていますが、この言葉は「機能的財政論」を主張したアバ・ラーナーの師匠であるジョン・メイナード・ケインズの造語であることなどおそらく彼らは知らないでしょう。

因みに、この党は消費税増税(8%→10%)の凍結を主張しながら、同時に緊縮財政(健全財政論)も主張しています。

所詮、そんなものです。