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議会報告 川崎市政

北朝鮮情勢と無防備都市宣言2017/09/03    

地方議会では、議員でなくとも一定の条件を満たすことにより、市民が議会に条例案を提出できる制度があります。(地方自治法第74条 第1項)

この制度を利用して、今から9年前の平成20年7月に「川崎市平和無防備都市条例」の制定を求める議案が川崎市議会に提出されたことがあります。

提出された条例の趣旨は…
例えば北朝鮮からミサイルが飛んできても、あるいは朝鮮有事が勃発して日本国内に送り込まれている工作員がゲリラ活動を展開しても、もしくはそれらの危機を事前に予測できていたとしても「川崎市は“無防備都市”を宣言していまーす。なので何も対応しませーん。そうすれば、国籍の区別無く川崎市に住むすべ ての人々が平和に生きられまーす」…というものでした。

http://www.city.kawasaki.jp/980/cmsfiles/contents/0000019/19538/gian_100.pdf

この「川崎市平和無防備都市条例」案が提出されたことにより臨時議会が招集され、私は当時所属していた会派を代表して、当該条例案の制定に反対の立場から以下のような討論を行いました。

まず、この条例案の根拠とされているジュネーブ諸条約追加議定書における「無防備都市」について、基本的な事実認識を明らかにしました。

1648年に制定されたウェストファリア条約以降、国際社会はハーグ陸戦法規をはじめ、いわゆる戦争に関する様々な国際ルールを構築してきました。

ジュネーブ条約もその一つです。

実はこの条約の中に「無防備都市」の文言がでてきます。

条例提案者は、これを曲解することで「川崎市平和無防備都市条例」の根拠としていました。

ジュネーブ条約で謳われている「無防備都市」とは、無防守都市あるいは開放都市とも言われいて、国際法学者や軍事専門家の間では一般的にオープンシティと言われています。

このオープンシティとは、戦時国際法によって認められた、戦時体制下における、いわば軍事オプションの一つです。

敵対当事国からの攻撃もしくは上陸を受けた場合、その地域が軍事的な抵抗を行う能力と意思がない地域であることを宣言することにより、敵対国の軍事的攻撃による被害を最小限に抑えようとするための宣言です。

「軍事的な抵抗を行う能力と意思がない」ということは、要するに敗戦が濃厚となった国家、もしくは軍事的遂行が不可能になった軍隊が宣言するための規定です。

そうしないと、無辜の一般市民が犠牲になってしまうからです。

因みに、シナ事変の際、敗戦濃厚となった蒋介石軍が、もしも南京でオープンシティを宣言してくれていれば、南京はもっと平穏に制圧されていたことでしょう。

蒋介石およびその配下の将軍たちはそれを怠り逃げ回っていました。

当時のシナには、まともな中央政府など存在していなかったのですから、各地の軍閥リーダーたちが、大陸の各都市でオープンシティを宣言してくれていれば、シナ事変そのものがもっと早く収束されていたはずです。

つまり、その都市をオープンシティにするかどうかの判断及び決定を行う宣言主体は、軍事活動を展開し統制している軍隊並びにその軍隊とその都市を統治している政府なのです。

国土防衛上の責務と使命を負っている政府と軍隊が決定すべき重要事項を地方公共団体の一つである川崎市が独自の判断で決定・宣言することなど不可能であり、国土防衛の義務を有し、その軍事的任務を戦略的に遂行している政府及び軍隊がこれらを決定・決断すべきことは極めて当然な話しです。

また、このような国の専管事項である防衛政策に地方当局が関与することは法律上も認められていません。

したがって、宣言主体となり得ない川崎市がこのような条例を制定することはできないわけです。

そもそも、このジュネーブ条約に基づくオープンシティの宣言は、戦時体制下において敵対当事国に対して行うものであって、紛争状態になく、敵対する当事国の定まっていない平時において、かかる宣言を行うことはできません。

仮に戦時体制下において地方自治体が日本国政府の合意のないまま勝手にオープンシティを宣言した場合、敵国に対して軍事上の利益を与えようとしたとして、自治体の首長たる市長が内乱罪や外患誘致罪あるいは外患援助罪の容疑で処罰されることも否めないのです。

また戦時体制下にあったとしても、その敵対する当事国がこのジュネーブ条約を批准していなければ、オープンシティの宣言は何ら効力を発揮しません。

例え敵対当事国がジュネーブ条約を批准していたとしても、その宣言を受け入れるか受け入れないかの選択はその敵対する当事国に委ねられる、というのがジュネーブ条約なのです。

つまり、日本政府がオープンシティの宣言を行ったとしても、必ずしも敵対する当事国がその宣言を認めてくれるという保証はないということです。

条例案では、オープンシティの宣言が、あたかも平和創出の手段であるかのごとく謳われていますが、このこともまた大きな誤解でした。

仮にその都市をオープンシティにすることが敵対当事国に受領されたとしても、その都市が敵方の兵站基地に使用されるなど敵の軍事拠点として利用され、我が国に対する攻撃と侵攻はそのまま継続されることになりますので、平和など創出されないのです。

敵対する当事国が、このオープンシティとなった都市を軍事利用することもまた、ジュネーブ条約及び戦時国際法は認めていることなど、条例提案者らは知らなかったのでしょう。(もしかして、それらを承知した上で提案していたのか?)

長くなるのでこのあたりで止めますが、要するに「無防備都市条例」なるものが、いかに無知蒙昧なものであったかを証明する材料は事欠きませんでした

今月9日の「建国記念日」に向けて、北朝鮮がさらなる軍事挑発を強行する可能性があるとして各国が警戒しています。

韓国国防省によれば、北朝鮮では6回目の核実験がいつでも行える状態が維持されているとのことです。

今後も北朝鮮は我が国の上空を通過するミサイル発射を繰り返すことでしょう。

こうしたことの延長で、いかなる有事が勃発するのかも誠に不透明です。

平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意している人たちは、それでも無防備都市を宣言したいのでしょうか。

そもそも、平和を愛する諸国民に北朝鮮は含まれているのか?

彼ら彼女らにぜひ訊いてみたい。