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議会報告 政治・経済

技術力を疎かにする国…2017/08/17    

去る8月8日、財務省から経常収支が発表されました。

2017年上半期における日本の経常収支は10兆5101億円の黒字で、黒字幅はリーマン・ショック以降最大です。

こうした「黒字系!?」のニュースが流れると、なんとなく「日本の景気は上向いているのではないか」と思われる方もおられるでしょうし、これを材料に「景気対策(財政出動)は不必要です」と言いたげな政府(財務省)の思惑も見え隠れします。

経常収支とは、貿易収支、サービス収支、所得収支(第一所得収支)、経常移転収支(第二所得収支)の合計です。

その内訳の推移をみてみますと、下のグラフのとおり圧倒的な黒字は所得収支(グレーの棒グラフ)です。

所得収支とは、日本人や日本企業が外国で稼ぐ所得(雇用者報酬)及び金利や配当金の合計から、外国人や外国企業が日本で稼ぐそれを差し引いたものです。

2016年の所得収支の黒字は、なんと18.1兆円です。

このように我が国の経常収支の中身をみますと、そのほとんどが所得収支の黒字であることがわかります。

因みに、この経常収支の黒字の積み上げが、そのまま対外純資産(ストック)になります。

2016年における日本の対外純資産額は、3,067,264(百万US$)で文句なしの世界第1位です。

このように、我が国が世界最大の対外純資産国である所以は、前述のとおり圧倒的な所得収支の黒字にあったわけです。

また「有事の金」と言われるように、有事になると為替市場で円が買われているのも、実はこうしたことが背景にあるからです。

それに我が国の場合、積み上がった莫大な対外純資産から上がる金利や配当金がまた大きいわけです。

それが18兆円を超える所得収支の黒字化の原資になっています。

なので、現在の日本の国際収支は、経常収支の黒字対外純資産の増大所得収支の黒字経常収支の黒字  ⇒  対外純資産の増大 所得収支の黒字… という拡大循環になっています。

とはいえ、このことは裏を返せば、国内経済が長引くデフレで需要不足のため、外国で稼いだ所得が国内に向かわず、海外に向かっていることの結果でもあります。

よって、あまり誇れる話でもありませんね…

一方、2011年の福島第一原発事故以来、我が国は原発を止め、その穴埋め電力として火力発電所をフル稼働させてきました。

その火力発電所を動かすためのエネルギー源として、中東からの天然ガスの輸入に大きく依存してきたわけです。

2012年以降その貿易収支が赤字化したのは、そのことが主因です。

その貿易収支も、昨年ようやく黒字化しました。

といって、経常収支はあくまでも海外との所得のやり取りの結果ですので、経常収支の黒字赤字をもって経済力の勝ち負けになるわけではありません。

それを勝ち負けと考えるのは、まさに重商主義です。

そのうえで注目すべきは、我が国のサービス収支です。

上のグラフのとおり、我が国は一貫して赤字です。

サービス収支とは、その名のとおり各種サービスの取引にかかわる収支です。

例えば、「輸送収支」「旅行収支」「その他サービス収支」の 3 つに大別されます。

そして「その他サービス収支」には、ロイヤリティなどを計上する「知的財産権等使用料」や「建設」、「通信・コンピュータ・情報サービス」などが含まれます。

我が国のサービス収支は、赤字で推移してきましたが、近年その赤字幅は縮小しつつあります。

2014年の段階において、マイナス3兆801億円と過去3番目に小さい赤字額になっています。

その要因として、旅行収支の赤字幅縮小と知的財産権等使用料収支の黒字幅拡大などが挙げられます。

別に我が国は発展途上国ではないので、旅行収支が赤字になったところでべつに気にはしませんが、それよりも注目すべきは、もう一つの知的財産権等使用料収支のほうです。

そこで、我が国の技術貿易収支の推移をみてましょう。

技術貿易は特許・実用新案・商標・意匠などの知的財産権などの国際間の取引で、その収支は知的財産使用料などの受取額(技術輸出額)から支払額(技術輸入額)を差し引いたものです。

我が国がこれを黒字化させたのは意外にも1993年で、つい最近のことです。

1993年に黒字化し、その後、右肩上がりで拡大することができたのは、むろんそれまでの間に技術開発や研究開発への弛まない投資が行われてきたからです。

技術力は一日にして成らず、なのです。

とこらが昨今では、我が国の研究開発費をGDP比でみますと、お隣の韓国にする負けている始末です。

因みに我が国は1998年以降、デフレによって名目GDPが全く成長していません。

よって、たんにGDP比率で負けているだけでなく、分母のGDPすらも縮小していることをも念頭に入れなければなりません。

このままでは、我が国の技術貿易収支が、再び赤字化する日が訪れることを指摘せざるをえません。