〒214-0012
川崎市多摩区中野島3-15-38-403
TEL:044-934-3302 / FAX:044-934-3725



議会報告 政治・経済

キットカットとデフレ2017/08/14    

スイスのヴヴェイに本社を置く世界最大の食品・飲料会社、Nestlé(以下「ネスレ」)

ネスレといえば、日本でもお馴染みのチョコレート「キットカット」が有名です。

キットカットが日本に上陸したのは1973(昭和48)年ですが、当時は未だネスレからの発売ではありませんでした。

ネスレがロントリー社の株式を取得することで、キットカットを引き継いだのは1988(昭和63)年のことです。

その翌年、ネスレ霞ケ浦工場において、日本で初めてキットカットが製造されました。

世界と比較しても、キットカットの発売自体はそれほど早くはなかった日本ですが、なんと現在、キットカットの本国・イギリスに次いで、世界第二位のキットカット消費国なのだそうです。

日本で発売されたキットカットの種類はなんと100以上で、世界に類例を見ないスピードでキットカットの開発が進められてきました。

興味深いのは、キットカットの種類が増えはじめたのが、1990年代後半からのことであった点です。

1990年代後半といえば、我が国がデフレに突入したころです。

グラフのとおり、我が国がデフレに突入したのは1998(平成10)年からです。

デフレの生成過程は次のとおりです。

バブル崩壊によって保有する資産価格が下落した企業は、バランスシートを修正するために投資や消費を減らしはじめます。

このことで需要(投資・消費)の縮小がはじまります。

それに加えて政府が緊縮財政(歳出の削減)を行うと、さらに効果覿面で需要が縮小していきます。

すると、物価は下落します。

物価が下落するとことで、今度は所得(実質賃金)が縮小します。(GDP三面等価の原則)

所得が縮小すれば、さらに消費が低迷して需要不足に拍車をかけます。

要するに、投資や消費の縮小 → 物価の下落 → 所得の縮小 → 投資や消費の縮小 → 物価の下落 、という負のスパイラルです。

これが我が国では、1998(平成10)年以降、20年間も続いています。

そこで、キットカットの種類が増えた理由はこうです。

物価が下落するわけですから、当然のことながらキットカットの価格も下がります。

そこでネスレは新たな種類のキットカットを開発します。

開発して新商品を販売した時点では、そこそこ高い値段で売れるのですが、デフレですので再び値が下がりはじめます。

というか、デフレ経済では値下げしないと売れません。

利益の薄くなっていく商品を売り続けることはできませんので、また新たな種類のキットカットを開発します。

すると、しばらくは高値で売れるのですが、またすぐに値下がりしていきます。

そこでまた新たな種類のキットカットを開発して…という繰り返しによって、1990年代後半以降、我が国には100種類以上のキットカットが存在しているわけです。

なので種類の多さは、デフレの副産物と言っていいのかもしれません。

とはいえ、種類を増やすための手間とコストをかけた割には、ネスレの従業員の所得(実質賃金)が向上しないところがデフレの恐ろしさです。

働けど働けど所得(実質賃金)が増えていかない、それがデフレです。

また消費者サイドからすると、安ければ買うが、高ければ買わない、というのがデフレです。

デフレが解消され、物価と所得(実質賃金)が相乗的に向上していけば、消費者はそこそこ高くなっても買うことができます。(それ以上に所得が増えていくので…)

これを、インフレ経済といいます。

インフレ経済になったのに、もしもキットカットの種類が増えず、ひたすらに価格が上昇していくだけであったのなら、それは明らかな供給不足(=需要過多)による非効率化です。

そこで、規制緩和など、いわゆる構造改革が必要になります。

何が言いたいのかと申しますと、経済政策はデフレ期とインフレ期とでは全く異なるということです。

「デフレによってキットカットの種類が増えたぁ~」と言って喜んでいるのは間違いです。

マイルドなインフレ状態において、ネスレの従業員の所得(実質賃金)を上昇させつつ、キットカットの種類が増えていく、そういう真っ当な経済にしなくてはなりません。