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議会報告 政治・経済

財政健全化という副産物2017/08/05    

TPP議論が盛んだったころ、「輸出依存度の高い日本には多角的な貿易協定が必要だ」とか、「閉鎖的な日本市場をもっと開放し世界に打って出るべきだ」とかいう、いかにもイメージ先行の軽薄論をよく耳にしました。

こうした手合いは、たいていの場合、ワイドショーかニュース番組などで聞きかじったことに自分のイメージを加えて適当に発言しているだけです。

要するに、まじめに政治のことなんか考えたことのない人たちです。

例えば、輸出依存度。

輸出依存度とはGDPに対する輸出額の比率のことですが、2015年の輸出依存度を国際比較してみますと、下のグラフのとおりです。

オランダ、韓国、ドイツなどが輸出依存度が高いと言われるは理解できますが、14%程度の比率をもって「日本の輸出依存度は高い」とするのはだいぶ無理があるような気がします。

確かに私も小・中学校時代に「日本は貿易依存度が高い」という教育を受けた記憶があります。

では時系列で我が国の輸出依存度をみてみましょう。

上のグラフのとおり、リーマン・ショック以前、米国で発生した住宅バブルの恩恵を受けて日本の輸出額が増えた2007年、2008年ころを除いて、我が国の輸出依存度が15%を超えたことはないようです。

学校で「貿易依存度が高い」と教えたのは、ひょっとして高度成長期の話しだったのかもしれずと思い、念のため高度成長期の輸出依存度も調べてみました。

高度成長期の絶頂期(1960年代)は、むしろ10%を切ってますね。

それもそのはずで、この時期における我が国の高度成長は、適度なインフレ率で実質賃金が着実に上昇し、分厚い中間層が形成され需要の主役になりました。

つまり、強い内需によって成長したのですから、輸出依存度が高まったはずはなかったわけです。

なのに、いかにも我が国が加工貿易(貿易立国)によって高度成長したかのように学校で教え込まれたような気がします。

一方、我が国の閉鎖性とやらについてですが、例えば工業製品の関税率を国際的に比較してみますと、下のグラフのとおりです。

ご覧のとおり、米国やEU地域よりも既に低いではありませんか。

次いで下のグラフで第一次産品関税率をみてみましょう。

さらに下のグラフは、農産品の平均関税率の国際比較です。

これらの数字をみても明らかなように、我が国が特に閉鎖的であるといえる根拠は見あたりません。

むしろ我が国は、これまで国を開き過ぎたと言っても過言ではなく、ましてや日本閉鎖的論など嘘の極みです。

まじめに政治のことなんか考えていないくせに、国民経済についての有害情報を垂れ流し続けている新聞社の一つが日本経済新聞です。

本日(8月5日)の社説から…

『改造内閣への注文(下)経済最優先の原点に戻って改革を
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO19692830U7A800C1EA1000/

(前略)社会保障費の伸びを抑えながら、巨額にのぼる国の借金を減らし、財政健全化を進める必要がある。高齢者への給付抑制や消費税率上げなど負担増の議論から逃げるべきではない。(後略)』

巨額にのぼる国の借金、というレトリックを使って国民の恐怖を煽り、社会保障費カットと消費税率引き上げの必要性を偉そうに説いています。

この「国の借金」という言葉は財務省の造語で、財務省の御用新聞である日本経済新聞も踏襲して使っています。

因みに、日本銀行は「国の借金」という言葉を使わず、正確に「政府の負債」と言っています。

「国の借金」と言ったほうが、なんとなく国全体の借金という印象を国民に与えることができるがために使っているのでしょう。

いわば財務省によるプロパガンダ用語です。

そこで、日本国家全体のバランスシートにより政府の負債がどの程度のものであるのか調べてみましょう。

上のグラフのとおり、一般政府(中央政府+地方政府)の負債は、2017 年3月末時点で1,271兆円です。

一方、一般政府には562兆円の資産がありますので、純負債は709兆円です。

しかも、日銀は年間80兆円のペースで国債を購入しており、2017年3月末時点で日銀保有額は既に427兆円です。

親会社である日本政府の負債を子会社である日銀が購入したことになりますので、この427兆円は利払いを含めて連結決算で相殺されます。

なので事実上、政府の純負債額は282兆円です。

これらもすべて、日銀が買い取って政府の負債残高をゼロにしてもいいのですが、それでは困る方々が出てきます。

生命保険会社などの金融機関です。

生保などの金融機関は、預かった保険料を長期債(日本国債)で運用していますので、もしも日銀が国債を全部買い取ってしまうと彼らのビジネスモデルを壊すことになってしまいます。

よって、政府負債を無理にゼロにする必要もないわけです。

要するに、現在の日本政府の負債なんていうものはこの程度の話しに過ぎず、何ら深刻な問題ではないということです。

それを「国の借金」と煽って、悪質に問題視している人たちがいるだけなのです。

因みに、政府負債対GDP比率の低下こそが財政健全化の定義になりますが、日銀が保有する国債(財投債、政府短期証券を含む)を除いた政府負債で換算すると、実質的な政府負債対GDP比率は下のグラフ(オレンジの折れ線)のとおりです。

黒田日銀による量的緩和以降、急速に改善しています。

これは、むろんアベノミクスの効果などではなく、量的緩和による副産物です。

量的緩和の真の目的は政府負債を減らすことではなく、あくまでもデフレからの脱却にあります。

とはいえ、いくら日銀が量的緩和しても、政府による財政出動が伴わなければデフレからの脱却は不可能です。

その財政出動を「国の借金プロパガンダ」が阻んでいます。