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議会報告 川崎市政

政府支出を消費しているのは政府でなく国民2017/07/08    

昨日(7月7日)、厚生労働省から5月の実質賃金の速報値が発表されました。

5月の実質賃金(きまって支給する給与)の対前年比は、0.1%でした。

早速、時系列でグラフ化してみました。

昨年の10月以降、明らかなマイナス水準です。

実質賃金は、名目賃金(額面の賃金)を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で除して算出されています。

なぜなら、どんなに名目賃金(額面の賃金)が上昇しても、それ以上に物価が上昇してしまうと実質賃金は縮小したことになってしまうので、賃金の実体を反映させるために消費者物価指数で除して算出しています。

そこで、上のグラフに消費者物価指数の推移を重ね合わせてみました。

一見、昨年4月から9月にかけて実質賃金が上昇しているように見えますが、これは統計上の欠点で、デフレによって物価が下落してしまうと、どうしても実質賃金が上昇したように見えてしまうのです。

本来、物価と実質賃金がともに上昇するのが正しい経済の姿です。

一方、昨年の10月以降は、一転して物価が上がったことで実質賃金が下ってしまったわけです。

要するに、二つの折れ線が「x」の文字のようになって、実質賃金と消費者物価が交差しているのは、我が国が依然として典型的なデフレ状況にあることを示しています。

昨年10月から物価が上がったといっても、それはあくまでも実質賃金の算出の際に使用する「持家の帰属家賃を除く総合」という消費者物価指数のことで、日銀が指標としているコアCPI(生鮮食品を除く総合)や、国際的な基準であるコアコアCPI(酒類を除く生鮮食品とエネルギーを除く総合)は依然として上昇に転じていません。

なぜ物価が上昇しないのかといえば、モノやサービスに対する支出が増えないからです。

モノやサービスに対する支出のことを需要(正しくは総需要)といいます。

その需要不足こそが、即ちデフレの正体です。

よく「物価が下がるのは、消費者にとって良いことなのでは?」という質問を頂きます。

ところが、物価が下がってしまうと、モノやサービスを作ったり売ったりしている供給者の賃金が下がることになります。(現に下がり続けています)

そうすると、給料の下がった人たちがまた支出を削減することになります。

支出が削減されると、モノやサービスの購入量が減りますので、またまた物価が下落します。

物価が下落するとまたまた給料が下がる、給料が下がると…(もうこのあたりでよろしいでしょうか)というのがまさにデフレスパイラルです。

なので物価と賃金がともに上昇していく経済こそが「正しい経済」です。

残念ながら需要不足というデフレのなかでは、企業に設備投資を行う意欲は乏しく、ましてや実質賃金の上がらない家計はどうしても貯蓄志向になってしまいます。

なので、デフレ期のモノやサービスへの支出を拡大できる経済主体は政府(行政)しかありません。

昨今、政府(行政)がおカネを使うことに嫌悪感を抱く不思議な人たちがおりますが、政府(行政)支出の利益享受者は基本的に国民です。

例えば、自然災害国である日本では、弛まない防災投資が必要です。

そのとき、防災投資の最大の受益者は政府というより国民です。

また、生産年齢人口が減少する日本では、政府(行政)によるインフラ投資や技術開発投資によって国民一人当たりの生産性(所得)を向上させる必要があります。

そのインフラ投資や技術開発投資の受益者もまた国民です。

あるいは、平成27(2015)年の政府支出額は106兆円でしたが、その内訳をみると下のグラフのとおりで、その106兆円による受益者はことごとく国民です。

各支出項目を詳細に述べますと…

防衛費は、むろん国民に対する防衛サービスの提供に関わる費用です。

一般公共サービス費は、行政・立法機関、財務・財政業務、対外業務、対外経済援助、一般行政、基礎研究、公的債務取引に関する支出のことです。

社会保護費とは、傷病・障害、老齢、遺族、家庭・児童、失業、住宅、その他の社会的脱落等々の国民生活に関わる福祉関連の支出です。

娯楽・文化・宗教費は、国民の娯楽・スポーツサービス、文化サービス、放送・出版サービス、宗教(歴史的建造物維持への補助金等)等々への支出です。

一番大きな支出となっている保健費は、言うまでもなく医療用品、医療用器具・設備、外来サービス、病院サービス、公衆衛生サービス、R&D(保健)、その他の保健等々への支出です。

住宅・地域アメニティ費は、上下水道や街頭などインフラ関連に対する支出です。

環境保護費は、廃棄物管理、廃水管理、公害対策、生物多様性・景観の保護などへの支出です。

経済業務費は、経済、通商、労働関係業務一般、農畜産業、林業、漁業、狩猟、燃料・エネルギー、鉱業、製造業、建設、運輸、通信等々への支出です。

公共の秩序・安全費が一番解り易いかもしれず、即ち警察サービス、消防サービス、裁判所、刑務所への支出です。

教育費については言うまでもなく、就学前・初等教育、中等教育、中等教育修了後教育(高等教育を除く)、高等教育、教育に付随するサービス等々への支出です。

要するに、106兆円を支出するのは政府なのですが、それを消費しているのはことごとく国民なのです。

「政府がカネを使うのはケ・シ・カ・ラ・ン」という人たちは、まるで政府支出を公務員だけが消費しているかのように誤解をされているのではないでしょうか。

国民の安全を守り、国民の所得を増やすためにおカネを使うのが政府の役割です。

政府におカネを使わせないのは、「政府に仕事をするな」と言っているに等しい。

政府支出を削減しなければならないのは、余程のインフレ期だけです。

くどいようですが、今の日本はデフレの直中です。

因みに、公務員給与は、国民が享受する行政サービスの対価の一部です。

何とか維新みたいに「とにかく公務員給与は無駄だ」とお考えの人は、家が火事になっても消防車を呼ばないでください。

家に強盗が押し入ってきても警察を呼ばないでください。

急病を患っても救急車を呼ばないでください。

移動の際にも公道を通らないでください。

国民生活を支えるための重要な供給サービスを担っている公務員もまた、GDPを創出する立派な経済主体の一つなのです。

このように言うと「でも、中にはちゃんと働いていない公務員だっているじゃないかぁ~」と、個別の問題を持ち出して全体を否定される人もおられるでしょう。

マクロとミクロの議論をごっちゃにしては正しい結論を導くことはできません。

ちゃんと働かない人は公務員に限らず、どんな組織にもおられます。