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議会報告 川崎市政

万年筆マネー2017/06/12    

一昨日(6月10日)の日本経済新聞に、またまた頓珍漢な記事が掲載されていました。

『預金残高ついに1000兆円 回らぬ経済象徴
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC24H01_Q7A610C1EA2000/

金融機関に預金が集まり続けている。銀行や信用金庫などの預金残高は2017年3月末時点で、過去最高の1053兆円となった。日銀のマイナス金利政策で金利はほぼゼロにもかかわらず、中高年が虎の子の退職金や年金を預け続けている。預金は銀行の貸し出しの原資だが、今は活用されないまま積み上がる「死に金」。沸き立たぬ日本経済の今を映し出す。(後略)』

この記事の何が頓珍漢かと申し上げますと、まず第一に記事の赤字部分です。

意外と知られていない事実ですが、金融機関の貸し出しの原資は国民から集めた預金ではありません

私が言うと説得力がありませんが、このことはイングランド銀行の季刊誌(2014年春号)にちゃんと書いてあります。

例えば、ある金融機関がAさんに100万円を貸し出す場合、その金融機関はAさんの預金通帳に「100万円」と記帳するだけで貸し出し完了です。

これを、ジェームス・トービンという経済学者は「万年筆マネー」と言いました。

デジタルデータなどなかった時代、銀行マンが貸し出し先の通帳に「100万円」と万年筆で記帳するだけでよかったからでしょう。

なのに、日本の経済問題を専門とする新聞社ですらも、こうした事実を知らない。

「だったら銀行は無限におカネを貸し出すことができのか?」…

…という疑問をお持ちの方もおられるでしょう。

もちろん、銀行の貸し出しには制約があります。

それは借り手の返済能力です。

借り手に返済能力さえあれば、銀行は無限に貸し出しを増やすことが可能です。

とはいえ、金融機関全体として預金の拡大が一定値を超えてしまうと、さすがにインフレ率が上がっていきますので、それを抑制するため、金融機関は預金の一定比率を日銀当座預金(各金融機関が日銀にもっている当座預金)に積み立てることを義務付けられています。

これを預金準備制度といいます。

あるいは預金の25%以上の自己資本比率を維持することなども義務付けられています。

これを自己資本比率規制といいます。

こうした預金準備制度や自己資本比率規制をクリアさえしていれば、借り手の返済能力の範囲の中で、銀行はいくらでも貸し出しを拡大することが可能なのです。

それなのに、どうして銀行や信用金庫などの預金残高は2017年3月末時点で、過去最高の1053兆円」になってしまうほどに、銀行の貸し出しは増えないのでしょうか。

むろん、デフレだからです。

デフレというモノやサービスが購入されがたい経済状況では、企業の設備投資が縮小して当然です。

上のグラフのとおり、1998年のデフレ突入以降、企業の内部留保(現金・預金)は積み上がり続けています。

とくにリーマン・ショック後は急激に増えています。

デフレを脱却しないかぎり、この流れは止まりません。

因みに、銀行の貸し出しは極めて重要です。

なぜなら、デフレ脱却のための通貨(アクティブ・マネー)は、銀行の貸し出しによって創造されるからです。

よって、銀行の貸し出し(国債購入も含む)が増えないかぎり、絶対にデフレは脱却できません。

では、銀行の貸し出しを増やすためには何が必要なのでしょうか。

あたりまえの話しですが、借りてくれる人を増やすことです。

もしもデフレが克服されたなら、黙っていても多くの企業や個人が銀行からおカネを借りてくれることでしょう。

しかし、今はデフレです。

なので、デフレが克服されるまでの間は、企業や個人に代わる、ほかの誰かがおカネを借りてくれる必要があります。

ほかの誰かで、最も返済能力のある借り手は誰でしょう。

むろん、日本政府(地方自治体も含む)です。

その日本政府が、○○の一つ覚えのように「プライマリー・バランスがぁ~」と言って、借金(財政出動)を拒んでいます。

前述の新聞社も、平素から「クニのシャッキンがぁ~」とか言って、ありもしない日本財政破綻論をいたずらに吹聴し国債発行(財政出動)によるデフレ脱却を阻止しています。

そのくせ、「銀行の貸し出しが増えない」などと書いて喜んでいるから質が悪い。

自分たちこそが、回らぬ経済を助長する片棒を担いでいるのに…