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議会報告 政治・経済

骨密度の低い「骨太の方針」2017/06/10    

昨日(6月9日)、いわゆる「骨太の方針2017」が閣議決定されました。

今回、閣議決定された「骨太の方針」の正式名称は『経済財政運営と改革の基本方針2017 ~人材への投資を通じた生産性の向上~』です。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0609/shiryo_04.pdf

注目点の一つは、第4章の2「改革に向けた横断的事項」の項にある次の件(くだり)かと思われます…

基礎的財政収支(PB)を 2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再 生なくして財政健全化なし」との方針の下デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある…(第4章の2より抜粋)

まことに矛盾だらけの文章です。

例えば、①デフレ脱却(経済再生)歳出歳入改革(緊縮財政)は明らかに相反する政策目標です。

しかも、2020年PB黒字化債務残高対GDP比を引き下げの2つの目的を同時に達成することなど不可能です。

そもそも、①のデフレを悪化させているのは、②の緊縮財政が原因です。

また、㋐(2020年PB黒字化)のための緊縮財政がデフレを長引かせ、結果として㋑の債務残高対GDP比の引き下げを阻んでいます。

つまり…
①+㋑  vs ②+㋐
…の闘いなのです。

経済には絶対に逃れることのできない原則(恒等式)が存在します。

その一つが…
国内政府部門の収支 国内民間部門の収支 海外部門の収支 ゼロ
…という恒等式です。

仮に「海外部門の収支」がゼロであったとすると、「政府部門」か「民間部門」のいずれかが、収支を黒字にしたり赤字にしたりして経済は成り立っています。

「政府部門」も「民間部門」も「海外部門」も、そのすべてが黒字収支ということは物理的にありえません。

ところでデフレとは、GDPになる貨幣の不足状態です。

ここがなかなか理解されないところなのですが、「政府部門」か「民間部門」のいずれかが、あるいは双方が収支を赤字にしてくれないとGDPになる貨幣量は増えないのです。

どんなに日銀が量的緩和(国債購入)したところで、民間金融機関が日銀内にもっている当座預金残高が増えるだけです。

日銀が民間金融機関から国債を購入すると、その対価としての貨幣が日銀当座預金に積み上がるのですが、それはまだ金融経済というストック経済の中にあるのであってGDPにはなりません。

よって、黒田日銀は2017年5月時点で351兆円にまで日銀当座預金を増やしましたが、一向にデフレを脱却できないでいます。

むしろ安倍政権の緊縮財政によって再デフレ化しています。

日銀当座預金という貨幣がGDP(総需要)になるためには、誰かの収支赤字(借金)が必要です。

真っ当な経済の場合、収支を赤字にすべき経済主体は「政府」か「企業」のいずれかです。

例えば、企業の貯蓄率(対GDP比)の推移をみますと下のグラフのとおりです。

 

デフレ突入以降、企業の貯蓄率はプラス状態が続いています。

そして、時の内閣の緊縮財政やら、リーマン・ショックなどの海外要因やらによって企業のそれはプラスを拡大しています。

企業の貯蓄率が上昇するということは、GDPになる貨幣が不足するということですので、むろんデフレ圧力です。(※貯蓄に回った貨幣はGDPにならない)

とはいえ、モノやサービスの需要が縮小するデフレ期に「企業に借金しろ」と言っても気の毒なことです。

需要増(インフレ化)が見込めない以上、借金してまで投資する企業などないからです。

なので、民間部門を代表する企業がダメであるなら、頼みの綱は政府部門しかありません。

つまり、デフレ期において借金すべき経済主体は「政府」です。

ところが、その頼みの政府部門がまた緊縮財政(貯蓄率の向上)をやっています。

 

因みに、小泉内閣が緊縮財政を行ったとき、たまたま運よく米国が不動産バブルになって海外需要が伸びたので、そこそこ名目GDPが増えました。

なのであの時は…国内政府部門、国内民間部門、海外部門のうち、海外部門が収支を赤字にしてくれたことで何とか助かったのです。

現在の安倍緊縮は、これといった海外特需がないので、もろに再デフレ化しています。

これもまた社会通念と全く異なる理論なのですが、企業の貯蓄を吐き出させるには、政府が財政を出動させ収支の赤字を拡大しなければならないのです。

政府の歳出拡大 → 需要拡大 → デフレ脱却 → 企業投資の拡大(貯蓄の縮小)
…だからです。

巷には、政府が借金を増やすと目くじら立てて騒ぎ出す人たちがおられますが、この人たちのほとんどが家計簿の発想です。

借金を悪とするのは、経済主体としてもっとも脆弱な家計だけです。

政府なり企業なり、いずれかの経済主体が借金(赤字収支)を作ってくれないと、経済は絶対に成長しません。

経世済民において(家計簿ではない)、借金は経済成長の源泉なのです。

よって、まずは…
1) 2020年PB黒字化目標を一旦は破棄すること
2) 財政を出動させ(借金を増やして)、需要を拡大(デフレを脱却)すること

そうすれば、名目GDPと税収を共に引き上げることになりますので、債務残高対GDP比の引き下げが可能です。

PBの黒字化などは、「デフレ脱却」と「債務残高対GDP比を引き下げ」を具現化してから考え行えば充分です。