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議会報告 政治・経済

おカネの役割とは2017/05/01    

先日、今村復興大臣が自身の失言によって復興大臣を辞任されました。

後任には、福島県選出で衆議院の震災復興特別委員長を務めていた吉野正芳氏が起用されています。

辞任の原因となった今村氏の発言要旨は次のとおりです。

『社会資本などの毀損もいろんな勘定の仕方があるが、25兆円という数字もある。これがまだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な、甚大な被害があったと思っている。』(今村氏の発言要旨の一部)

我が国は世界有数の超自然災害大国である以上、いつどこで災害が発生しても不思議ではない国です。

どこで良かったとか、どこで悪かったとか言うこと自体がそもそもナンセンスかと思われます。

今村氏の「東北で良かった」発言は問題外として、私が更に気になったフレーズがあります。

それは「25兆円という数字」の部分です。

むろん今村氏は、震災によるインフラの被害度を金額で分かりやすく表現したつもりだったのかもしれませんが、文脈をみるかぎり、少なくとも私には25兆円ものおカネが消えたことの衝撃を訴えているように聞こえました。

「これがもし東京だったら、もっとおカネを損したんだよ」と。

もしも今村氏が「だからこそ25兆円以上の復興費用が必要なのだ」と言って緊縮路線の財務省と政治的に戦っているのなら理解しましょう。

しかし、自主避難者の住宅提供等を打ち切っているくらいですから、そんなことはないはずです。

なので、この政治家にとって「おカネ」というものは、国民の安全や国土形成よりも価値の高い存在なのだという印象を抱いたわけです。

発言は他者にあり、印象は我にありです。

被災者への侮辱となった氏の発言部分について、すかさず総理がお詫びするほどに一応は内閣として猛省の意を示しているようですが、ひきつづき野党やマスコミ等が糾弾していますので、私は今村氏のような「おカネが大事」主義の誤りを指摘したいと思います。

昨今、今村氏のみならず、政治家や行政関係者の多くには、おカネに対する大きな誤解があります。

多くの人が誤解しているのは、おカネはそれ自体に価値がある、と思い込んでいる点です。

誤解を恐れずに言いますが、おカネそのものには価値はないのです。

むろん親が子供に「おカネを大切にしなさい」と教えるときの「大切」とは全く別次元の話しです。

それはあくまでも家計簿的貨幣観の話しで、国民を豊かにするための政治、即ち経世済民におけるおカネは全く別です。

経世済民におけるおカネというものを家計簿的貨幣観で考えてしまうと経済は滞ってしまいます。

現に日本はデフレという経済の滞り状態です。

ではおカネとは何であるのか?

実はおカネとは、経済取引の過程で債権と債務を確認するための記録媒体でしかないのです。

例えば、Aさんが1,000円札を1枚だけ持っていたとします。

その1,000円という1枚のお札の債務者は日本銀行です。

ということは、それを手にしているAさんは日本銀行に対して、1,000円の債権を有していることになります。

そこで、AさんがBさんから1,000円の万年筆を購入しようとします。

そうするとどうなるでしょうか。

日本銀行に対する1,000円の債権が、AさんからBさんに移動することになります。

要するに、万年筆を購入したことで債権者がAさんからBさんに変わったのです。

このように債権と債務を確認する、それがおカネの役割です。

ところが、今村前復興大臣のようなおカネが大事主義者は、おカネそのものに価値があると考えます。

それは「おカネは商品の一つ」と考えるいわば商品貨幣論です。

さらに言えば、1万円の紙幣は1万円分の金属の裏付けがなければならないと考える金属主義の貨幣論でもあります。

そのような貨幣論にたつと、おカネの量が物価を決める(デフレは貨幣現象)という間違った経済認識を持つことになります。

つまり、デフレは貨幣現象であると考えてしまうと、おカネの量(現金の量)さえ増やせばデフレを脱却できると誤認することになります。

ところがデフレは貨幣量の問題ではなく、需要量の問題であるため、おカネの量を増やしたところでデフレ解消には至りません。

現にアベノミクス以降、既に350兆円ちかくもおカネ(マネタリーベース)が発行されましたが、それでも物価は上昇していません。

どうしてでしょう?

おカネはモノでも商品でもなく、たんに「債権・債務の記録媒体」だからです。

おカネの量を増やしたところで、モノやサービスの購入(債権・債務の発生)が増えないかぎり物価は上昇しません。

それから商品貨幣論のもう一つの欠点は、緊縮財政を正当化してしまうことです。

おカネはモノであると考えてしまうことで、「おカネは使うと消えてしまう」という誤解が生じてしまいます。

なので、おカネが消えないように緊縮財政によっておカネを溜め込もうとします。

まさに家計簿的発想です。

この考え方は、深刻化するデフレ経済や公共事業悪玉論に通じています。

遅々として進まない被災地の復興、そして日本の防災インフラへの投資費用が抑制されているのはそのためです。

超自然災害大国たる我が日本国が公共事業を悪玉視するのは亡国の兆です。

おカネは使っても消えません。

債権と債務の関係が変わるだけです。

断言しますが、日本のモノやサービスを供給する力が衰えないかぎり、日本政府が何十兆円のおカネを使ったところで絶対にハイパーインフレになどなりません。

おカネに対する誤解が、我が国の政策を歪めつづけています。