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議会報告 政治・経済

「構造改革」再考2017/04/23    

松下政経塾とは、パナソニックの創業者である松下幸之助氏が設立した、未来のリーダーを育成することを目的にした公益財団法人だそうです。(出典:松下政経塾HP)

設立以来、松下政経塾から輩出された政治家は多く、現職の衆議院議員だけでも次のとおりです。(敬称略で失礼します)

逢沢一郎(自民党)、野田佳彦(民進党)、松原仁(民進党)、鈴木淳司(自民党)、原口一博(民進党)、伊藤達也(自民党)、高市早苗(自民党)、武正公一(自民党)、河井克行(自民党)、山井和則(民進党)、玄葉光一郎(民進党)、前原誠司(民進党)、秋葉賢也(自民党)、木内均(自民党)などなど、ほか10名。

ご覧のとおり、元総理大臣や現職の国務大臣らの名前を見ることができます。

その松下政経塾の公式サイト(塾生の紹介)には、卒業生の一人が書いた『「構造改革」とは何か』という小論が掲載されています。
http://www.mskj.or.jp/report/1528.html

読んでみますと…その冒頭には「一般的に、構造改革というと政策の是非を問うのが常である。しかし私は、それ以上に重要な問題があると考える。それは何を『いかにやるか』(How to do)を問うことである。従来の構造改革論議にはこの視点が欠けており、それが改革を阻む一因となってきた」とあります。

氏によると「構造改革をやるのはあたりまえの話しで、もっと具体的に何をいかにやるかの議論が欠如している」とのご指摘です。

この時点で既に読む気が失せましたが、すべてを読まずに評論するのも何なので、貴重な時間を使わせて頂き拝読仕りました。

そのうえで、以下、申し上げます。

もしも私が政経塾の講師であったのなら、この生徒に「構造改革について論じるのであれば、まずは構造改革の定義を明確にしなければなりませんよ」と指導したことでしょう。

少なくとも、たんなる「改革」と「構造改革」とでは、いったい何が違うのかくらいは明確にしなければなりません。

それを「構造改革という政策の是非を問うのが一般的であるが…」で片づけて、構造改革の進め方を説いてしまう。

では、私の「構造改革」の定義をご紹介します。

構造改革とは「株主や経営者の利益を最大化するための仕組みづくり」です。

もっと簡単に言えば「株主資本主義のすすめ」です。

断っておきますが、決して私は、株主や経営者の懐が豊かになることを否定しているわけではありません。

株主や経営者の皆さんが儲かるのはたいへんに結構なことなのですが…

問題は、労働者の賃金、あるいは国家国民の様々な安全保障を犠牲にしたうえで企業の利益を株主や経営者の懐にまわす、という意味での株主資本主義が成立していることです。

例えば代表的な一例を挙げます。

1990年代以降の株主への配当金労働分配率の推移をみると、次のグラフのとおりです。

因みに労働分配率とは、GDPに占しめる人件費(雇用者報酬)の割合のことです。

労働分配率 = 名目雇用者報酬 ÷ 名目GDP

この20年間、労働分配率は下がりつづけ、企業の配当金は増えていることがわかります。

これは構造改革の名のもとに雇用に関する規制が緩和されてきた結果です。

労働分配率の低下は即ち所得の縮小ですので、当然のことながらデフレ(需要不足)圧力になります。

即ち、この20年間にわたり我が国で深刻化しているデフレの元凶こそが、この構造改革だったのです。

加えて、食料、エネルギー、医療、介護、教育、防犯、防災(国土形成)等々、これら国民の安全保障にかかわる重要分野を株式会社に委ねようとする、これも構造改革です。

例えば、エネルギー分野で進めようとしている発送電分離もその一環です。

発送電を分離した米国のカリフォルニア州では、大手電力会社であったパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社が2001年4月に倒産したのは有名な話です。

恐ろしいことに、ユニバーサル・サービスを強いられた送電会社のコスト負担があまりにも大きくなりすぎて経営が悪化したため、発電会社が送電会社に電力を供給しなくなってしまったという始末です。

それで困るのは送電会社だけではなく、その先にいる消費者、即ち国民です。

それに、利益の上がらない送電会社は何をしたか?

株主資本主義の常として、株主利益を優先するためにメンテナンス費用や技術開発費用をカットしたのです。

結局、米国では電力自由化や発送電分離を行った地域から送電網がボロボロになっていきました。

くどいようですが、その犠牲者は圧倒的多数の国民です。

まさに構造改革は、ネオリベラリズム(新自由主義)思想にもとづいた、グローバル株主とグローバル経営者のためだけの社会制度改革なのです。

…と言うと、必ず「じゃぁ、今の日本に改革の必要はないと言うのかぁ~」と幼稚なことを言う人がおりますが、私はべつに「改革の必要はない」などと言っているのではありません。

そもそも改革とは運用面というソフトウェアの問題です。

なのに今の日本では、国民の安全保障を担っている重要な公的サービスが、構造改革の名のもとにハード面から破壊されつつあるわけです。

要するに「民間にできないものまで民間に」…それが構造改革なのです。