〒214-0012
川崎市多摩区中野島3-15-38-403
TEL:044-934-3302 / FAX:044-934-3725



議会報告 政治・経済

プライマリー・バランスの呪縛2017/03/15    

昨日(3月14日)、政府は経済財政諮問会議に米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授を招いて、今後の経済財政運営について議論した模様です。

私が申し上げるのも誠に僭越ですが、ジョセフ・スティグリッツ教授は『ノーベル経済学賞』を受賞した数多の経済学者のなかでも、他を圧倒して実に説得力のある理にかなった解説をされる学者さんです。

因みに、ノーベル経済学賞について補足させて頂きます。

ノーベル「経済学賞」は本当のノーベル賞ではありません。

ご承知のとおり、ノーベル賞はアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて創設されたものです。

現在、ノーベル賞には次の6つの部門があります…
1) 物理学賞
2) 化学賞
3) 生理学・医学賞
4) 文学賞
5) 平和賞
6) 経済学賞

ところが、6)の「経済学賞」だけは、アルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて創設されたものではありません

1960年代に、スウェーデン国立銀行が創ったものです。

正式名称は、『アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞』です。

どのような経緯(いきさつ)でスウェーデン国立銀行が賞を加えたのか知りませんが、ノーベル家としては「ネオリベ(新古典派経済学)の学者ばかりに賞を与えるのなら、ノーベルの冠をはずしてほしい」と言っているそうです。

ノーベル経済学賞とは、そういう代物です。

ついでに、新古典派経済学についても補足しておきます。

もともとは、英国ケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャルらのケンブリッジ学派の経済学のことを指しました。

現在ではレオン・ワルラスの「一般均衡理論」や、ミルトン・フリードマンの「マネタリズム」の流れを支持する経済学を指します。

新古典派経済学では、経済的自由放任主義がその根本とされています。

とにかく自由な競争市場に任せろ。

いわゆる「経済人」によって構成される市場原理こそが最も効率的であって、政府の規制や財政出動などは一切要らない…という教義です。

とはいえ、経済学の言うところの「経済合理性のみを追求する『経済人』」などこの世に存在するはずもなく、新古典派経済学が掲げる「セイの法則」、即ち供給は自身の需要を産む → 需要と供給は常にバランスする → 生産した商品は必ずすべて売り切れるなどなど、「新古典派経済学の理論は机上の空論である」との批判も大きくなっています。

新古典派経済学とは、そういう代物です。

さて、ジョセフ・スティグリッツ教授ですが、氏は2019年10月に予定されている消費税の10%への引き上げについても言及したようで、政府債務を減らすための消費増税は逆効果だ、と述べられたようです。

というより、スティグリッツ教授が指摘するまでもなく、消費税増税が財政再建にとって逆効果であることは今や常識と考えるべきではないでしょうか。

デフレ期に消費税が増税されると、余計に消費が落ち込んでしまい更なるデフレ圧力がかかります。

更なるデフレ圧力がかかると名目GDPが落ち込み、当然ながら税収が減ります。

かつて3%から5%に増税した橋本内閣もそうでしたし、5%から8%に増税した第2次安倍内閣も橋本内閣と全く同じ轍を踏みました。

消費税増税を否定すると必ずでてくるのが…

そんなこと言ったって「財政規律がぁ~」とか、「プライマリー・バランスがぁ~」とか言う連中です。

プライマリー・バランス(以下「PB」)は、財政健全化のための一手段であって、PBは財政健全化そのものではありません。

財政健全化の国際的定義は「政府債務の対GDP比の縮小」です。

なので、財政を健全化する方法は、分子の政府債務を減らすか、もしくは分母のGDPを増やすか、あるいはその両方のどれかになります。

これらを決定する要素は次の3つです…
1) GDP成長率
2) 金利
3) PB

GDPが成長すると分母が大きくなり、しなければ小さくなります。

金利が上がると分子が大きくなり、下がると小さくなります。

PBが増えると分子が大きくなり、減ると小さくなります。

要するに、PBは政府負債の対GDP比率を決める1要素にすぎないのです。

今、我が国が陥っているのは、この1要素にすぎないPBの呪縛です。

単年度の収支バランスにこだわるPB目標にとらわれることによって、むしろデフレ脱却のための財政支出ができないでいるからです。

PBが大事 → 緊縮財政 → 需要縮小 → 名目GDP縮小 → 税収縮小 → PBが大事

負のスパイラルです。

デフレの原因は将来不安だ、とかいうインチキを言って、PB目標を盾に財政出動をさせない。

2020年のPB黒字化達成目標を掲げたのは2010年の菅内閣というロクデナシ内閣です。

当時、あまりにも評判の悪かった民主党のマニフェスト(財源論)批判を誤魔化すために閣議決定したのがこの「2020年のPB黒字化目標」だったのです。

その後、緊縮財政を行うことで強引にPBを12%改善させましたが、政府負債の対GDP比率を13%も悪化させました

ロ・ク・デ・ナ・シ

安倍内閣は、このロクデナシ内閣のPB目標を誠実に踏襲しています。

PB重視=緊縮財政=小さな政府

これを正当化する学問的支柱こそが、新古典派経済学なのです。