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議会報告 川崎市政

「命の道」の費用便益比(B/C)2017/03/10    

国土交通省は、道路事業を進めるにあたって、事業ごとに費用便益比というものを算出します。

いわく「道路事業の効率的かつ効果的な遂行のため、新規事業採択時評価、再評価、事後評価の各段階において、社会・経済的な側面から事業の妥当性を評価し、併せて、評価を通じて担当部局においてより効果的な事業執行を促す」ために、だそうです。

費用便益比、いわゆるB/Cです。
B は、Benefit(ベネフィット)= 便益
C は、Cost(コスト)= 費用

事業化するには費用便益比が1.0を超えなければならず、1.0を超えない場合、効果の薄い事業として却下されます。

例えば現在、川崎市では、JR南武線の矢向駅から武蔵小杉駅間の踏切を一度に除却する連続立体交差事業が進められています。(注:連続立体交差事業は鉄道事業ではなく街路事業として行われています)

この事業の費用便益比は1.32です。

だから事業化されているわけですが、一方、JR南武線の武蔵溝ノ口駅以北(津田山駅、久地駅、宿河原駅、登戸駅、中野島駅、稲田堤駅)については連続立体交差化されません。

なぜなら、費用便益比が1.0に満たないからです。

費用便益比の分析は、ある年を基準年にして、道路整備が行われる場合と、行われない場合のそれぞれについて、一定期間の便益額と費用額を算定します。

道路整備に伴う費用の増分と便益の増分を比較することによって分析し、評価がなされるわけです。

但し、ここでいう便益(Benefit)の定義が問題です。

国土交通省による便益の定義は…
1) 移動時間の短縮
2) 走行経費の減少
3) 交通事故の減少
という定量化された3つの数値だけです。

道路をつくる効果って、これだけでしょうか。

国土交通省の便益定義には、防災上の安全性の効果とか、環境への効果とか、その地域のGDP及び増収効果とかは含まれていません。

例えば、2011年3月11日の東日本大震災の際、三陸縦貫自動車道が「命の道」として機能を発揮したことは有名です。

三陸縦貫自動車道、通称、釜石山田道路です。

住宅街のある北側と、工場などがある南側に隔てられている釜石は、東日本大震災の際、北側のほうが完全に孤立してしまいました。

とりあえず津波から逃れることができたものの、海岸沿いを走る国道45号線が壊滅状態であったために、北側に避難したおよそ1,000人の被災者がとり残されるかたちになってしまったのです。

むろん、水もない、食料もない、情報もない、という状況です。

ところが偶然にも、つい6日前に釜石山田道路が開通していたがために、そこを通って何とか逃れることができました。

もし釜石山田道路が開通していなかったら、1,000ちかくの餓死者がでていたのではないでしょうか。

釜石山田道路が「命の道」と呼ばれるようになったのはそのためです。

さて、この釜石山田道路の費用便益比はいくつでしょう?

1.01 です。

馬鹿げてます。

もし、あと0.1足りなかったらと思うとゾッとします。

我が国は、自然災害大国なのに…

そもそも政治の目的は「利益の最大化」ではありません。

経世済民です。