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議会報告 政治・経済

自由貿易は絶対に善なのか2017/02/15    

黒田日銀総裁によれば、経済の成長には「自由貿易」が不可欠なのだそうです。

『日銀総裁「アジアの成長に自由貿易不可欠」 サービス業がカギ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF14H09_U7A210C1EE8000/

日銀の黒田東彦総裁は14日、新潟市でアジア経済について講演し、今後の成長に向けて「自由貿易体制が維持されることが不可欠」と語った。製造業に加え今後はサービス業も重要になると指摘した。これまでにトランプ米新政権に色濃い保護主義的な政策が、世界経済の減速につながりかねないとの懸念を表明しており、自由貿易の重要性を改めて強調した。(後略)』

一方、評論家の中野剛志先生は、その名著『富国と強兵 地政経済学序説』(東洋経済新報社)において、全く反対のことを述べられています。

例えば19世紀のヨーロッパで自由貿易体制にあったのは1860年から1892年にかけてだそうで、とりわけ1866年から1877年までが貿易自由化の最大ピークだったとのこと。

ところが、この自由貿易全盛の時期に、ヨーロッパは大不況に陥っており、むしろその頃の米国は保護主義を強化することで目覚ましい成長を遂げて新興の経済大国として躍進したのです。

1892年以降、2年間かけて大陸ヨーロッパは景気回復期に入ったものの、なんとその時期は大陸ヨーロッパが保護主義へ回帰した時期とほぼ一致していたとのことです。

面白いのは、保護主義に回帰したこの時期に、意外にも域内の貿易量が急速に拡大したことです。

保護主義が貿易を拡大したのは、保護主義をとった国々の経済が成長したためなのですが、中野先生によると、このとき最も保護主義的な措置をとったヨーロッパ諸国が最も急速に貿易を拡大していったそうです。

なるほど「経済が成長する」ということは需要と供給がともに拡大していくということです。

マクロ経済でいうところの「需要」とは、消費と投資と純輸出を指します。

国内の供給能力が、拡大していく国内需要に追いつかなくなると、外国の供給力(輸入)に頼らざるをえません。

よって貿易量が増える、というわけです。

要するに、保護主義が貿易を阻害するものとは必ずしも言えないことを歴史は物語っています。

黒田日銀総裁は、たんに新古典派経済学に基づくネオリベ思想で「自由貿易こそ善だ」と言っているに過ぎないのでしょう。

産業革命によって飛躍的な生産量を誇った英国だって、それまでは保護主義(保護貿易)を貫いて国内の生産性向上を図っていました。

そして生産性向上に成功した途端、「はい、これからは自由貿易の時代です」と言って、世界中に自由貿易を強要して大英帝国という覇権国家になっていったのです。

生産性の低い国が生産性の高い国と競争すれば、絶対に負け組になります。

現在のEUをみても、自由貿易ではギリシャが絶対にドイツに勝てないのをみれば一目瞭然です。

黒田東彦総裁は昨日(2月14日)の衆院予算委で、物価は財政拡大で押し上げることができるという「シムズ理論」を「色々な前提を置かないと出てこない話」と一蹴されましたが、黒田日銀総裁にそっくりそのままお返ししましょう。

だったら「自由貿易は常に善」だって「色々な前提を置かないと出てこない話」でしょうに…

よく自由貿易を正当化するものとして、英国の経済学者デヴィッド・リカードによって提唱された『比較優位論』という国際分業に関する理論が使われます。

ですが、奇しくも黒田日銀総裁が言ったように、理論には必ずそれが成り立つ前提条件があります。

例えば、自由貿易を成立させるためには覇権国家(世界の警察を担う国)の存在が必要です。

19世紀のグローバリズムでは英国が、現グローバリズムは米国が覇権国です。

その覇権国家の力が衰えて、戦争や紛争状態が頻発して国際情勢が不安定化すれば国際分業など成り立たなくなります。

既に米国はイラク戦争とリーマン・ショックによって覇権国としての力を失いつつあります。

だからこそ中東は不安化していますし、ロシアがウクライナからクリミアを強奪することも、シナが東シナ海や南シナ海で侵略行為をあからさまにしていることもまかり通っているわけですが…

それだけではありません。

例えば、想定外の為替変動が起こっただけでも自由貿易は成り立ちません。

それにリカードの比較優位論が成立するためには、①資本移動の自由が制限されていること、②常に完全雇用が成立していること、などなど最低限これらの前提条件が整っていなければならないのです。

しかし、常に自由貿易を善とするグローバリズムは資本の移動を最大化するシステムなので、資本移動の自由が制限されていること、とはそもそも矛盾してしまうのです。

要するに「黒田総裁! 様々な前提条件を無視して自由貿易が絶対善だと考えるのは非常に危険なのではありませんか?」

こういう突っ込みを入れてくれる国会議員がほしいです。