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議会報告 政治・経済

TPPは対シナ包囲網にはならない2017/01/17    

安倍総理は、性懲りもなくTPP(環太平洋連携協定)の発効に意欲を示されています。

『自由貿易体制の意義強調 安倍首相、TPP早期発効に意欲
http://jp.reuters.com/article/abe-hanoi-idJPKBN1501IC

安倍晋三首相は16日、訪問中のベトナム・ハノイで記者会見を開き、トランプ次期米大統領の保護主義的な発言を念頭に、自由貿易体制の重要性をあらためて強調した。首相は「自由でルールに基づく公正なマーケットを作り上げていかねばならない」と述べ、環太平洋連携協定(TPP)の早期発効を目指す考えを重ねて表明した。(後略)』

つくづく、安倍総理は未だ冷戦構造期型の政治家さんなんだな、と思わざるをえません。

あれだけ品格を問われてきた(今も問われている!?)ドナルド・トランプ氏が、それでも次期米国大統領に選ばれた理由は何でしょう。

その理由は少なくとも二つあります。

一つは、自由貿易の名のもとに行われてきたNAFTA(北米自由貿易協定)によって、米国の白人労働者たちの雇用と所得が奪われたこと。

二つ目は、自由貿易を絶対善とするグローバリズムによって、多くの米国国民が「1% vs 99%」 の 「99%」に組み込まれてしまったことです。

自由貿易を否定することで選ばれた新大統領が、自由貿易を謳うTPP(環太平洋連携協定)に参加するはずがなかろうに。

デヴィッド・リカード(英国の経済学者)は自由貿易を擁護する理論を唱えたことで有名ですが、自由貿易が成立するためには最低限として次の二つの条件が必要です。

1) 国境を越えたカネ(資本)移動がないこと

2) 国境を越えたヒトの移動がなく、それぞれの国で完全雇用が成立していること

現にデヴィッド・リカードの比較優位論は、これら二つを前提としなければ成立しない理論になっています。

しかしながら、ご承知のとおり、NAFTA(北米自由貿易協定)にしても、TPP(環太平洋連携協定)にしても「カネ」「ヒト」「モノ」の国境を越えた移動の自由が前提です。

何よりも、自由貿易に基づくグローバリズムが成立するためには、一国の力で安定した世界秩序を形成することができ、また各国に各種の貿易ルールに従わせることもでき、あまつさえ各地域の地政学リスクに対して責任をもって対応することのできる覇権国の存在が必要になります。

1820~1917年の英国がそうであったように。

あるいは、1945年以降の米国がそうであったように。

注1) 1945~1991年は米ソ対立の冷戦構造期であり、西側陣営の覇権国が米国、東側陣営の覇権国がソ連でした

注2) ソ連が瓦解したのちは、米国が唯一の覇権国としてパクス・アメリカーナによるグローバリズムを主導した

我が国が戦後の高度経済成長を実現できたのも、米国という西側の覇権国がソ連と対峙してくれたお陰でした。

また日本と米国との間に多少の経済的な摩擦が生じても、冷戦構造上、米国は日本に対して様々な譲歩もしてくれました。

そんなことが許されてきたのも、米国が覇権国としての意志と能力を有していたからです。

しかし残念ながら、イラク戦争とリーマン・ショックを機にして、米国は覇権国としての意志と能力を喪失しはじめました

そのことによって、今やグローバリズムが行き詰まっているわけです。

昨年のブレグジットにしても、トランプの当選にしても、それぞれそうした背景があってのことです。

なのに安倍総理は、「集団的自衛権こそが日米同盟の深化につながり、TPPこそが対シナ包囲網につながる」と本気で考えているようです。

だとしたら、総理の思考は未だ冷戦構造期の中にあると言わざるをえません。

そもそも安倍総理は・・・

・・・日本の領土防衛のために、米国が本気でシナと戦争するつもりがあると思っているのでしょうか。

・・・あるいは、TPPに参加表明した12カ国の中で7カ国もの国がシナの提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加ないし参加申請しているという現実をどのように理解されているのでしょうか。

・・・あまつさえ、「TPPは対中包囲網!」という一見ごもっともそうなキャッチフレーズは、日本にネオリベ的政策を行わせることを目的に各種の情報操作を仕掛けている、いわば米国の「工作機関」がこしらえた用語であることを知らないのでしょうか。

といって私は「日本は鎖国すべきだ」などという極論を言っているのではありません。

国民生活に関わる各種の安全保障(食料、エネルギー、医療、介護、教育、防犯、防災など)を維持しつつ、各国の民主主義(国民主権)を尊重していくためには、グローバリズム自由貿易制限されてしかるべきだ、と主張しております。