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議会報告 未分類

第3回川崎市議会臨時会にて反対討論にたつ2008/07/24    

 地方自治法第74条に基づく直接請求により、議案第100号「川崎市平和無防備都市条例の制定について」が、平成20年第3回川崎市議会臨時会に提案されました。

 私は以下の理由により、本議案には反対をいたしました。7月24日の本会議において、民主党川崎市議会議員団を代表し、反対討論にたちましたので、その演説を原文のまま掲載いたします。

Dsc_1188_8 ⇒7月24日、川崎市議会本会議場にて

【反対討論】 

・・・三宅隆介・・・

 私は、民主党川崎市議団を代表し、今臨時会に提案されました議案第100号「川崎市平和無防備都市条例の制定について」に対し、反対の立場から討論を行います。
 まず、この条例案の根拠とされているジュネーブ諸条約追加議定書における「無防備都市」について、基本的な事実認識を明らかにしておきたいと思います。
国際社会においては、1648年に制定されたウエストファリア条約以来、ハーグ陸戦法規をはじめ、いわゆる戦争に関する国際ルールが様々構築されてまいりました。ジュネーブ条約もそのひとつであります。このジュネーブ諸条約第1追加議定書に謳われている無防備都市とは、「無防守都市」あるいは「開放都市」ともいわれ、国際法学者や軍事専門家の間では、一般的に「オープンシティ」と言われております。このオープンシティとは、戦時国際法によって認められた戦時体制下における、いわば軍事オプションのひとつであります。敵対当事国からの攻撃、もしくは上陸を受けた場合、その地域が軍事的な抵抗を行う能力と意思がない地域であることを宣言することにより、敵対国の軍事的攻撃による被害を最小限に抑えようとするための宣言であります。
これら基本的かつ客観的な知識にもとづいて、以下のとおり提案された本条例案の不備と矛盾点を指摘いたします。
まず、その都市をオープンシティにするかどうかの判断および決定を行う宣言主体は、軍事活動を展開し統制している軍隊、ならびにその軍隊とその都市を統治している政府であるということを理解しなければなりません。このような、国土防衛上の責務と使命を負っている政府と軍隊が決定すべき重要事項を、地方公共団体のひとつである本市が独自の判断で決定すること、または宣言することは常識的に考えても不可能であります。国土防衛の義務を有し、その軍事的任務を戦略的に遂行している政府および軍隊が、これらを決定・決断すべきことは、極めて当然であります。このような国の専管事項である防衛政策に地方当局が関与することは法律上も認められておりません。
したがって、宣言主体となりえない本市が、このような条例を制定することはできないものと考えます。
加えて、このジュネーブ条約に基づくオープンシティの宣言は、戦時体制下において、敵対当事国に対して行うものであり、現在のように紛争状態になく、敵対する当事国の定まっていない平時において、かかる宣言を行うことはできません。仮に戦時体制下において、地方自治体が日本国政府の合意の無いまま、勝手にオープンシティを宣言した場合、敵国に対して軍事上の利益を与えようとしたとして、自治体の首長たる市長が、内乱罪や外患誘致罪、あるいは外患援助罪の容疑で処罰される可能性があることも否めません。
また、同じく戦時体制下にあったとしても、その敵対する当事国が、このジュネーブ条約を批准していなければオープンシティの宣言は、何ら効力を発揮いたしません。さらには、敵対当事国がジュネーブ条約を批准していたとしても、その宣言を受け入れるか受け入れないかの選択は、その敵対する当事国に委ねられております。つまり、たとえ日本政府がオープンシティの宣言を行ったとしても、必ずしも敵対する当事国がその宣言を認めてくれるという保障はない、ということであります。
さらに付け加えれば、敵対当事国がこの宣言を受領したとしても、その都市住民の安全が必ずしも保障されるとは限りません。なぜなら、国際法はしばしば平然と破られてしまうものであるからです。またそれが歴史の教訓でもありますが、例えば国際法は、民間人や民間施設など非軍事対象への攻撃を禁止しています。しかし、かつての大東亜戦争などにおいても、その国際法が禁止している民間人への無差別爆撃や、広島や長崎に投下されたように、民間人を大量殺戮する残虐兵器の使用も、平然と容認された事実を我々は忘れてはならないと考えます。
つぎに本条例案によれば、オープンシティの宣言は、平和創出の手段であるかのように謳われておりますが、このことも大きな誤解であると考えます。仮に、その都市をオープンシティにすることが敵対当事国に受領されたとしても、その都市が敵方の兵站基地に使用されるなど、敵の軍事拠点として利用され、我が国に対する攻撃と侵攻はそのまま継続されることになりますので、平和は創出されないのであります。このオープンシティとなった都市を、敵対する当事国が軍事利用することをも、ジュネーブ条約および戦時国際法は認めている事実を我々は認識しなければなりません。
つぎに、この条例案は、日本国憲法の精神に基づいているとされていますが、現行の日本国憲法の下においても、日本国民の生命と財産、あるいは国家として有する主権というものを、国家そして国民自らが守護する権利は、当然のことながら認められております。また主権国家の国民には、国を守る義務があり、国家行政の一部である地方自治体の一義的な役割も、国民たる住民の主権を守ることにほかなりません。これら主権防衛の権利と義務を否定する本条例案には到底賛成できません。
また、この条例案では、「旧陸軍登戸研究所」ほかの戦争関連事跡の調査、保存、公開につとめ、必要な措置を行うことが謳われていますが、旧陸軍登戸研究所は、あくまでも私有財産であり、条例で保存公開につとめるなどを定めることには課題があります。また、国際法におけるオープンシティの議論と、この登戸研究所ほか戦争事跡の調査に関わる議論はまったく関連性のない議論であると言わざるを得ず、本条例案に賛成できない理由のひとつでもあります。
最後に、安全保障と平和に対する国民のあり方について申し上げます。しばしば軍事と平和が対立する概念として論じられるところでありますが、軍事的空白地において平和が損なわれるという現実からも、軍事と平和は対立する概念ではないことが解かります。さらには、その軍事のオーナーは、恒久平和を希求する私たち国民そのものであります。シビリアンコントロールとは、国民が軍事の暴走を制御するという意味だけでなく、国民が軍事を自分達の国のために、最も効果的に運用するという意味をも含んでいます。そのため、何よりも大切なことは国民が軍事を正しく理解することであると考えます。
以上の観点から、真の恒久平和と国家の安全を切に願いつつ、議案第100号「川崎市平和無防備都市条例の制定について」は賛成できないことを表明いたします。